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Concert Report: 2015 SEIJI OZAWA MATSUMOTO FESTIVAL / Celebrating Seiji at 80!


CONCERT REPORT


2015 セイジ・オザワ 松本フェスティバル
マエストロ・オザワ・80歳バースデー・コンサート
2015年9月1日
キッセイ文化ホール


Official Site: http://www.ozawa-festival.com/







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9月1日、この日80歳を迎える小澤征爾氏のためのバースデー・コンサートが開催された。この日はアルゲリッチをはじめとするジャンルを超えた音楽家たちが出演。また、演奏の合間にはボストン響、ベルリンフィル、サンフラン響、ウィーン国立歌劇場、ヨー・ヨー・マ、ピーター・ゼルキンや上原選手をはじめとするレッドソックスの選手たちからのお祝いメッセージや趣向を凝らしたハッピー・バースデー演奏の映像が流れた。司会を有働由美子アナウンサーが勤め、キャロライン・ケネディ駐日米国大使からのスピーチもあるなど、会場全体が一体となって盛り上がる楽しいお祭りコンサートとなった。


オープニングはサイトウ・キネン・オーケストラ(以下、SKO)による「キャンディード序曲」。小澤氏が客席に現れ、尊敬の念のこもった大きな拍手で迎えられた。踊りだしたくなるようなリズム、ダンサーの動きが目に浮かぶような喜びに満ちた序曲。セレブレーションデイのオープニングにふさわしい一曲だった。


オープニング演奏のあとはジャン=ポール・フシェクールとリディア・トイシャーが登場。プーランクを歌ったジャン=ポール・フシェクールは心地よく響く美しいテノールを聴かせ、リディア・トイシャーは「子守歌」を清涼感のあるソプラノで情感豊かに歌い上げる。


続いて、小澤征爾スイス国際アカデミーと小澤国際室内楽アカデミー奥志賀の初合奏でメンデルスゾーン「弦楽八重奏曲 変ホ長調」。ノリの良いテンポにのって抑揚にとんだ音楽を自然体で奏でる。生徒達から「誕生日おめでとう」の声をかけられ、小澤氏は客席から元気にこたえていた。


次に登場したマティアス・ゲルネは冒頭の美しいチェロに誘われるように、深く響くバリトンで朗々と、感動的に「エリヤ」歌い上げる。柔らかく透明感のある声が印象的だった。


一部のラストはマーカス・ロバーツ・トリオで「Billy Boy」「Bessie's Blues」と心地よいスイングを楽しんだ。自在に鍵盤を操り、イマジネーションあふれるパッセージとハーモニーを奏でるピアノ。安定感のなかにも独特の雰囲気をもつベース、そして鮮やかなスティックさばきのドラムス。自らがきざむグルーブに乗りながらのドラムソロは圧巻だった。マーカスの煌びやかなピアノソロは本当に見事で、ソロ後半からラプソディーインブルーに突入し、全体がパワーアップしながらエンディングまで盛り上がった。








第二部は、ラヴェルのオペラの「子どもと魔法」からスタートした。このオペラはフェスティバル期間中、子供のためのオペラやファミリーオペラで小澤征爾音楽塾オーケストラ(以下、音楽塾)と若い歌手たちのよって数回演じられており、ここには「オペラを通じて成長してもらいたい」という小澤氏の思いがある。音楽塾と若い歌手たちのよって」シンプルだがウィットにとんだセンスの良い演出が印象的。エンディングの厚みのあるハーモニーが素晴らしかった。 続く、シュポーア「九重奏曲ヘ長調」はSKOメンバーでもある音楽塾講師たちによる演奏。そうそうたるメンバーたちによるアンサンブルは見事で、まさに珠玉のアンサンブルだった。


そして第二部も後半になり、ジェームス・テイラー・バンドが登場。バンドメンバーは当日まで公表されていなかったが、ドラムはなんとスティーブ・ガット!ゆったりと心地よいグルーブにのってテイラーが「You’ve got a friends」を歌う。少しメランコリックな、やさしさに溢れた歌声が会場を包んだ。ミドルテンポの「Fire and Rain」では美しいシンバルと小気味よく響くタムで繊細に表現されたドラミングが印象的だった。「Shower the People」はテイラーの奥さんと息子さんもコーラスで参加。手拍子にのってステージと会場が一体となり感動的に盛り上がった。






そしてこの日のエンディング、注目の一曲が「マルタ・アルゲリッチ&小澤征爾&SKO」によるベートーベン「合唱幻想曲」。小澤氏は今回のフェスティバルでの初指揮となる。まさにこれ以上ない組み合わせだ。高らかに響き渡るベートーベン、喜びに満ちた輝かしいサウンドが全体を包んだ。重厚な和音からのアルペジオが紡がれ合唱へとつながる。輝かしいハーモニーが響くなかでアルゲリッチが時に強靭に、時に繊細に、自在に遊ぶ。迫力のあるコーラスがエネルギーを増し、最後、全てが終結してエンディングとなった。







プログラム終了後、ステージには大きなバースデーケーキが運ばれ、アルゲリッチのピアノ演奏に合わせて全体でハッピーバースデーを合唱。家族や仲間たちに囲まれた小澤氏は本当に嬉しそうで、いつまでも暖かな祝福の拍手が続いていた。

最後に映像で流れた、「不思議だね。音楽っていうのは・・・」という小澤氏の言葉が心に響いた。





<プログラム>


第1部

バーンスタイン「キャンディード」序曲
サイトウ・キネン・オーケストラ
ロバート・スパーノ(指揮)

プーランク「平凡な日々」より 「パリへの旅」「ホテル」
プーランク「パリジアーナ」より 「あなた、もう描かないの?」
ジャン=ポール・フーシェクール(テノール)
小林万里子(ピアノ)

リヒャルト・シュトラウス「子守歌」Op.41, TrV19
リディア・トイシャー(ソプラノ)
小林万里子(ピアノ)

メンデルスゾーン「弦楽八重奏曲 変ホ長調」op.20
第一楽章 アレグロ・モデラート・マ・コン・フォーコ
小澤征爾スイス国際アカデミー
小澤国際室内楽アカデミー奥志賀

メンデルスゾーン「エリヤ」op.70 主よ、足れり、わが命をとりたまえ!
マティアス・ゲルネ(バリトン)
ロバート・スパーノ(指揮)

「Billy Boy」
「Bessie's Blues」
マーカス・ロバーツ・トリオ
マーカス・ロバーツ(ピアノ)、ロドニー・ジョーダン(ベース)、ジェイソン・マルサリス(ドラムス)


第2部

ラヴェル「子どもと魔法」より
金澤桃子、駒田敏章、大賀真理子、佐藤優子、清水多恵子、町秀和、高畠伸吾、栗林瑛利子、藤井玲南
OMF合唱団
OMF自動合唱団
小澤征爾音楽塾オーケストラ
ナタリー・シュトゥッツマン(指揮)

シュポーア「九重奏曲ヘ長調」op.31 第二楽章 スケルツォ
豊嶋泰嗣(ヴァイオリン)、川本嘉子(ヴィオラ)、原田禎夫(チェロ)、山本修(コントラバス)、ジャック・ズーン(フルート)、フィリップ・トーンドゥル(オーボエ)、山本正治(クラリネット)、吉田將(ファゴット)、ラデク・バボラーク(ホルン)

「You’ve Got a Friend」
「Fire and Rain」
「Shower the People」
ジェームス・テイラー・バンド
ジェームス・テイラー(ヴォーカル、ギター)、ジェフ・バブコ(キーボード)、スティーブ・ガット(ドラムス)、ジミー・ジョンソン(ベース)
OMF合唱団

ベートーヴェン 「合唱幻想曲」
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
リディア・トイシャー(ソプラノ)
ナタリー・シュトゥッツマン(アルト)
福井敬、ジャン=ポール・フーシェクール(テノール)
マティアス・ゲルネ(バリトン)
OMF合唱団(合唱)
サイト・ウキネン・オーケストラ
小澤征爾(指揮)

演出 デイヴィッド・ニース

主催
マエストロ・オザワ80歳を祝う会実行委員会
友人代表:マルタ・アルゲリッチ、ドナルド・キーン

司会 有働由美子




"COLUM"

お祝いのブラスバンド演奏 チャイコフスキー序曲「1812年」
バースデーコンサートに合わせての企画で、地元の中学校や高校の吹奏楽部員とSKOの金管楽器メンバーによるチャイコフスキー序曲「1812年」が演奏された。小澤氏も曲の途中から会場に入り、曲に合わせて体を動かしながら楽しそうに演奏を聴いていて、演奏終了後は「ありがとう」と演奏者に声をかけていた。この日、演奏中に大砲の音色として入る予定であった松本城鉄砲隊の火縄銃の空砲は悪天候のため予定を変更して、演奏前後に野外で響かせた。



レポート:松坂 麻子
撮影:大窪 道治、山田 毅


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