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池長一美インタビュー

 

繊細で色彩感ゆたかな音色、水を打ったような静けさの中で響くシンバルの音は、最後に消え入る瞬間まで聴き入ってしまう・・・印象派ドラマーとも言われる池長一美は「間」を聴かせることのできる、数少ないドラマーである。

 

 

Q:ほとんどアメリカで活動されているんですか?

池長:
住んでいるのは横浜ですけど、帰国してから昔の仲間が呼んでくれて、ヨー ロッパやアメリカに演奏に行くことが、ここ数年多かったから・・・
渡米する前までは、ジャズ界の大御所の方達のグループにもお世話になっていた ことがあったんですけど、アメリカに渡って、ニューヨークやボストンのミュージ シャンに出会ってから、そっちのほうが楽しくなってしまって、気持ちはどう もそこに置いてきてしまっているみたいです(笑)。

帰国してからはジャズ以外の音楽性が全く違うバンドでも呼んでもらって、それ はホント勉強させて頂いてます。

 

Q:本当にきれいで繊細な音色ですね。音色へのこだわりは相当もっていらっしゃるのですか?音作りは?

池長:
自分では特に意識はしてないんだけど、人からはよく「きれい」とか、「音色に色彩感がある」とはよく言われますね。タッチのことはよく言われるんです。

おそらく僕、ドラムっていうのはあんまり好きじゃないんですよ、たぶん根本的に・・・血沸き肉踊るっていうのは好きだけど、いつも僕の頭の中にあるのはピアノなんですよ。ずっとピアノを弾きたかっんだけど小さい頃は習えなくて、我流で弾いていてもやはり基本的なところがないので・・・そうこうするうちにドラムの方が叩けるようになっちゃって、だからずーっと「ピアノを弾きたい」っていう気持ちがあるんです。最近はギターもやっていますが・・・

要するに和音の出せる楽器・・・つまりドラムにはリズムとメロディは あるけどハーモニーはない。でもピアノで言えばそのハーモニーにあたる部分だと思うんです。コードの上にシンバルやブラシなどで色をつけたりするのは大好きです。

だから良いピアノの人と演奏するっていうのは、自分にとってすごく幸せなことだし・・・ピアノと対等な、ピアノと同んなじような気持ちで演奏したい、というのがありますね。

アンサンブルをするときに、ピアノ、ベース、ドラムというのが基本形だとしますよね。で、それぞれ役割っていうのがあって、ひとつの三角形みたいな感じでね。"頂点"がピアノのメロディーで"底辺"にベースとドラムがいるとするじゃないですか。それぞれ役割分担があって、(ドラム、ベースは)ピアノと同じポジションには、あまりいてはいけないんですよ。僕はドラムでここに(頂点に)、ピアノと対等に、、、こういう風に(逆三角形に)演奏したんですよ。ベースに支えていてもらって、ピアノと対等に会話したい・・・というところがすごくあるんです。

あと音作りというか「どういうふうに作っていきたいか?」みたいなことに関して言えば、「オールアラウンドプレイヤーだけど、ジャズはしっかり押さえている」というか、自分の根っこはしっかり、何かのジャンルに持っていて、それを使って「あらゆる音楽を、ジャンルを問わずに表現できるか?」ということ。

つまりは「自分の言葉を持っているか否か?」ということなんですが。僕の場合、ジャズを突きつめることによって、いずれはそこに自分のパーソナルな感じ方を、自分のパーソナルな ボキャブラリーを使って、表現出来るようになっていくと考えています。自分 にとってのジャズとはそういうもので、音楽を創るためのツールでもあるんです 。そのツールを使って、いろいろな新しい表現方法をつくっていきたい、 視点や見方を変えて、「こういうことも出来るんだな」というところを開拓していきたい、というところがありますね。

 

Q:また音色のことになりますが、特にシンバルの音がものすごく透明感があってきれい、という印象が強いのですが、シンバルは何を使っていらっしゃるのですが?

池長:
オールドと新しいのを混ぜて使っています。

 

Q:パイステかと思いました。

池長:

たとえばA.P.J.の時はボスフォラスというオールドを意識したトルコ製の新しいのを使 っていました。新しいの含めて約40枚ちかく持っていて、それを 音楽のタイプと、その日の気分によって選んでます。

オールドは美味しい倍音が良く出て、あったかい感じで、、、ハンドメイド で職人が一枚一枚思い入れを込めて作っていたので、深いですよ、やっぱ面白いで すよ、そういうシンバルを使うとね、もう叩くだけでイメージ湧きますよ、、音が 変に揃わないから、もう叩くだけで音が変わるんですよ。

 

Q:ソロパフォーマンスをされるとうかがいましたが、どのようなパフォーマンスなんですか?

池長:
ドラムだけで1時間くらい演奏するんです。

 

Q:アコースティックのドラムセットだけですか?

池長:
そうです。限られた機材でやるのがまた面白いんですよ。同じ音でもタイミングとかタッチとかによって、まるきり違う印象になるじゃないですか。3点セットがやっぱり良いですよ。一番単純な。

あと、PAを通した音とか嫌いなんですよ。例えば自分のところに聞えている音は、すごく自然な生のきれいな音なのに、変にPAで増幅させて、会場にすごい音量でいっちゃったら、もう意味が全然変わっちゃうんですよね。それがPAの恐いところで、日本はPA使いすぎなんですよね。生の楽器を使って、演奏する音が一番良いし、空気感もあるし・・・。アンサンブルの時は、その場にあった表現をしますが、自分一人の時は、やはり自分にしかできない、自分が本当に好きな"ところ"で"わがままに"やりたいですからね。

 

Q:ソロパフォーマンスの予定は?

池長:
ないですね。それを仕事として長く続けていくのは、やっぱ、難しいと思うんですよ。本当にアンダーグラウンドのところだけでやっていくのなら、いいと思うんだけど・・・。それをもうちょっと曲にしたりとか、パーカッションを使ってアンサンブル的なこともできれば、とか・・・いろいろと模索中なんです。

 

Q:ところで音楽をはじめられたきっかけは?

池長:
やっぱり小学校の高学年くらいからかなあ。小学校の時、休憩時間に女の先生と友人5、
6人とで砂場で歌をうたっていたんですよ。順番に一人ずつ歌わされるでしょ。僕が砂場で歌ったときに、みんなの目の色が変わったのを感じたんですよ。「あ、僕が歌うと、皆が喜んでくれるのかな?」というのが2、3年くらいの時ですよね。 一番のきっかけは、中学の時に悪友がいて、それが楽器屋の息子だったんです。そいつがドラマーだったんですよね。

僕はポール・マッカートニーとかが好きだったんですよ。ピアノ弾いて歌うたいたいな、とか思って。で、彼と一緒にロックバンドを作ったんですよ。だから最初はキーボードと歌だったんですよ。そのうちにインチキジャズを弾きだしたりして、ブルーノートコードを覚えたり、ブルースっぽいのを弾いたりなんかしていたんですが、そうこうしているうちに、ドラムのほうが叩けるようになっちゃったんですよ。ちょっと面白そうだな、と思って叩いたら、もうそれから病みつきになって・・・「なんでこんなシンプルなことをやっているだけなのに、楽しいのかなあ」って・・・

 

Q:11月にご自分のプロジェクトで海外の方と演奏されるとうかがいましたが?

池長:
11月にツアーをします。この夏にもう一回アメリカに行って、レコーディングしてくるんです。一応僕とピアノのバート・シーガーのプロジェクトで・・・またベストテイクを集めて、気に入ればCDにしようかな、と思っています。

 

Q:どんなスタイルの音楽なんですか?

池長:
エバンス・スタイルのピアノトリオ。とにかく僕はビル・エバンス・トリオ以降のスタイルが好きなんですよ。ビル・エバンスの流れを汲んで、そういうフレーバー、スタイル・・・トリオなら3人が対等に会話をする、皆が対等に語り合っている、そんな、皆が自然に接することができる音楽。クラシックピアノを弾いている人も・・・美しいんですよね。

たとえばJAZZを聴けなかった人が、「これなら聴ける」「こういうJAZZってあったんだ」と欲している音楽だと思うんです。それほど宣伝していないんですが(プロジェクトが動くときだけHome Page立ち上げ)、「1度来てくれたひとが、もう1回来てくれる」そんな風にしていきたいですね。

 

Q:これから先、どこを目指していかれますか?

池長:
そうですね。やっぱり日本人に生まれてきて、「やろうとしていること」と、「自分が生まれてきたところ」との距離を感じるんですよね。でも本当に自分の感覚を磨いていけば、対等になると思うんですよ。ソロパフォーマンスもピアノトリオを極めていくというのもそれぞれが一つの手段だし、自分にしかできないものを見つけたい、という感じです。それはまだ、自分の中で「のびきっていない」というか、「出きっていない」ものが、あるのを感じるんですよ。「何処をめざしている」というのはないんですけれど、なんか、あるんですよ、中に。それをもっと出していきたい、と思っています。

 

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とにかく自分自身の、そしてドラムという楽器の可能性を掘り下げるように追求する、ピュアな感覚を持ちつづけている方、という印象を受けました。当日はファミリーレストランで取材に応じていただいたのですが、コーヒーのお代わりをしながら、とても気楽にお話をしていただきました。(2001.5.22)

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インタビュー & PHOTO: S.Hatano

 

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