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Concert Report


2019 セイジ・オザワ 松本フェスティバル
オーケストラ コンサート Aプログラム


会場:キッセイ文化ホール
2019年8月23日






オーケストラ コンサート Aプログラムでは2019 セイジ・オザワ 松本フェスティバル初演となるシュミットの交響曲第4番とマーラーの交響曲第1番「巨人」が演奏された。シュミットはマーラーのもとでチェロ奏者として活動しており、この2人の曲を続けて聴けるのはとても興味深い。2曲ともフルオーケストラ編成による大曲で、迫力に満ちたオーケストラサウンドを存分に堪能した1日となった。

第1部で演奏されたシュミットの交響曲第4番は亡き娘のために作曲された曲。第1楽章はトランペットが柔らかい音色で奏でる悲しみを湛えた旋律でスタート。コントラバスがピチカートで深く刻む中、不安気に曲がスタートしていく。艶のある弦がうねりながらクレッシェンドしていく様は圧巻。悲愴感が漂う中で一条の光のように流れる優美はメロディーが美しく響いていた。

チェロによるメロディーがとにかく美しかった第2楽章。チェロが滔々と奏でるメロディーを弦が引継ぎ、さらにオーボエが歌う。ティンパニーが加わり葬送行進曲を思わせる中間部での盛り上がりは圧巻。チェロもオーボエも、そのアーティキュレーションの巾、表現力が豊かで聴く者の心を酔わせた。

弾むリズムに乗った第3楽章では、ファビオ・ルイージがおどけるような仕草も取り入れ、柔らかな動作で音楽を表現。リズミックで、しなやかに洗練されたオーケストレーションを堪能。冒頭から第1楽章と同じのテーマが奏でられる第4楽章では、様々な楽器が加わり、より表現の幅を増していく。次第に音量も増していき、オーケストラならではの壮大なハーモニー感を楽しんだ。

第2部はマーラーの交響曲第1番「巨人」。99名のオーケストラメンバーがステージに並ぶ様はまさに壮観だ。第1楽章、透明感のある弦のフラジオレットに導かれるようにオーボエとファゴットが柔らかく第1主題を奏で、遠くからトランペットのファンファーレが聴こえてくる。木管によるのどかなテーマを挟みながら、透明感のある美しい弦が明るい旋律を奏で、音量を増すと同時に弾むティンパニーの打音に乗って、リズミックに、ダイナミックに展開していく。ルイージはオーケストラと一体となり、全身で渾身のパフォーマンスをみせた。

テンポよく力強い三拍子と中間部の優美なワルツとの対比を楽しんだ2楽章では、特に中間部の踊りたくなるようなワルツのリズムが絶妙。童謡「フール・ジャック」のモチーフの掛け合いで始まる3楽章は厳かで陰鬱な雰囲気を漂わせる。冒頭、淡々と刻むティンパニー、美しい弦と哀愁を帯びた木管の響きが印象的だった。

そして、静けさを切り裂くようなシンバルで始まる4楽章はまさに嵐のように展開した。先を急ぐような激しさで突き進み、深い音色で抑揚たっぷりに歌った中間部が終わると、雷鳴のようなティンパニーが鳴り響き、オーケストラ全体のエネルギーが増していく。ラストに向けて全ての圧倒するような迫力で会場全体を飲み込んでいった。

演奏が終わった瞬間のオーディエンスは、熱い塊を飲み込んだよう、とでも言おうか? スタンディングオベーションで、いつまでもオーケストラと指揮者を讃えていた。



曲目

第1部
フランツ・シュミット:交響曲 第4番 ハ長調
I. アレグロ・モルト・モデラート
II. アダージョ
III. モルト・ヴィヴァーチェ
IV. テンポ:プリモ・ウン・ポーコ・ソステヌート-アレグロ・モルト・モデラート

第2部
グスタフ・マーラー:交響曲 第1番 ニ長調 「巨人」
I. 緩やかに、ひきずるように。-常にとても快適に
II. 力強く動いて、しかし速すぎずに
III. 厳粛かつ荘重に、ひきずらずに
IV. 嵐のような動きで


演奏: サイトウ・キネン・オーケストラ  オーケストラ出演者一覧

指揮:ファビオ・ルイージ


レポート:Asako Matsuzaka
撮影: Michiharu Okubo, Takeshi Yamada


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