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Concert Report


オーケストラ コンサート Bプログラム
子どものための音楽会 特別篇




2018 セイジ・オザワ 松本フェスティバル
オーケストラ コンサート Cプログラム “OMF Gig”


会場:キッセイ文化ホール
2018年9月2日



SKO公演のラストは、とにかくスペシャルな“OMF Gig”
グルーヴィーなジャズのビートにのって
会場全体が楽しくスウィング







オーケストラコンサートの最終日は“OMF Gig”。小澤征爾OMF総監督の恩師であり、今年、生誕100周年を迎えるバーンスタイン、そしてこれまでもGigで取り上げられてきたガーシュインの楽曲が演奏された。このGigには、「セイジのために」と急遽来日してくれたマーカス・ロバーツ・トリオもスペシャル・ゲストとして参加。これまでにない、JAZZYな一夜となった。


この日のオープニングは「キャンディード」。ノリのよいリズムの上で快活なテーマが流れる。雄大なオーケストラサウンドと抑揚豊かに歌うストリングスの美しい音色が印象的。日本デビューとなった若手指揮者、ケンショウ・ワタナベは曲にノリながら軽やかな動作で軽快にコンダクトし、1曲目で早くもオーディエンスの心をつかんだ。


2曲目「オン・ザ・タウン」ではマーカス・ロバーツ・トリオが加わる。8人のコントラバス奏者の横にウッドベースという位置関係になり、少し興味深い(トリオの場所が上手となったため、8人のコントラバス奏者の横にウッドベースという位置関係となった)。


ノリの良いオーケストラにドラムが加わったことで、よりグルーヴ感を増す。壮大に広がるサウンドのなかで、オーケストラ、トリオのバランスが本当に良い。ゆったりとした中間部ではマーカス・ロバーツのピアノがやわらかく響き、オーケストラも心地よく歌う。


オケもトリオも全体が楽しく弾み、ワタナベの指揮も踊るようだ。目まぐるしく変化するNYの街の風景が目に浮かぶ。ラストに向けてよりテンポアップし、駆け抜けるようにフィニッシュした。


3曲目はディエゴ・マテウスの指揮による「パリのアメリカ人」。「ラプソディー・イン・ブルー」と並ぶシンフォニック・ジャズである。言葉を音楽で表現するトーキー映画を見ているようで、その表現力に驚く。抑揚豊かでお洒落、ウィットに飛んだ演奏を楽しむ。オーケストラコンサートAプログラムで大喝采を浴びたマテウスは、この曲でも堂々とした指揮を展開していた。


第2部はマーカス・ロバーツ・トリオの3人による「ウェストサイド・ストーリー」でスタート。「ジェット・ソング」「トゥナイト」「どこかへ」「素敵な気持ち」の4曲が演奏された。ドラムの出すグルーヴがとにかく最高だった「ジェット・ソング」。ジェイソン・マルサリスのドラミングは自在で表情豊かだ。マーカスはお洒落でセンスのよいピアノソロを聴かせ、ベースのロドニー・ジョーダンは渋くて味わい深いアドリブを奏でた。


アップテンポな「トゥナイト」ではマーカスがバリエーション豊かな高速パッセージを披露。弾むビートにのって会場全体が楽しくスウィングし、大いに盛り上がった。美しく華麗なピアノサウンドとウッドベースがボーイング奏法で奏でる優しいメロディーを堪能した「どこかへ」、アップテンポ「素敵な気持ち」では安定したなかで多彩なアプローチをみせるドラムソロが圧巻で、場内から自然と拍手がわいた。この瞬間、そこはジャズライブ会場になったかのようで、そんな中で極上のジャズトリオを堪能した。


トリオのJAZZ演奏で盛り上がったあと、Gigのラストを飾るのはSKOがステージにもどり、全員による「アイ・ガット・リズム変奏曲」。

実はこの曲の最初の音、ストリングスの響きに驚いた。SKOのストリングスは本当に絶品で、一部でもその美しい響きを堪能したが、この曲の最初に響いたストリングスはさらに質感が違う、より研ぎ澄まされた、より透明感の高い音色だった。


曲が始まる早々、いきなりトリオによる激しいソロの応酬がスピーディーに展開。怒涛のようなドラミング、抑揚にとんだベース、ピアノは縦横無尽のプレイを聴かせる。ゆったりとしたパートでは美しいメロディーとハーモニー感を堪能し、ピアノと オーケストラの掛け合いを楽しむ。

曲は次々と変化していき、オーディエンスもどんどん惹きこまれていく。オーケストラとトリオが一体となってグルーヴし、スピード感が増すなか、圧倒的な迫力で大団円を迎えた。



















<プログラム>

第1部
バーンスタイン:キャンディード序曲(指揮:ケンショウ・ワタナベ)
バーンスタイン:オン・ザ・タウン ― 3つのダンス・エピソード(指揮:ケンショウ・ワタナベ)
ガーシュウィン:パリのアメリカ人(指揮:ディエゴ・マテウス)

第2部
バーンスタイン:ウェストサイド・ストーリーより(マーカス・ロバーツ・トリオ)
  ジェット・ソング/トゥナイト/どこかへ/素敵な気持ち
ガーシュウィン:アイ・ガット・リズム変奏曲(指揮:ディエゴ・マテウス)

演奏
サイトウ・キネン・オーケストラ
オーケストラ出演者一覧

指揮 ディエゴ・マテウス、ケンショウ・ワタナベ
特別出演 マーカス・ロバーツ・トリオ


レポート:Asako Matsuzaka
撮影: Michiharu Okubo, Takeshi Yamada


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