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Live Report
第1
8回 東京JAZZ - the HALL -

18th TOKYO Jazz FESTIVAL Official Site


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8/31 evening




Sep. 1 (Sat) daytime



チャールス・ロイド "Kindred Spirits" featuring ジュリアン・ラージ、 ジェラルド・クレイトン、 ルーベン・ロジャース and エリック・ハーランド
カマシ・ワシントン



チャールス・ロイド "Kindred Spirits" featuring ジュリアン・ラージ、ジェラルド・クレイトン、 ルーベン・ロジャース and エリック・ハーランド
Charles Lloyd "Kindred Spirits" featuring Julian Lage, Gerald Clayton, Reuben Rogers, and Eric Harland


言わずと知れたジャズ界の重鎮が若手を引き連れて登場。フリーフォームなイントロに期待感が高まる






タイトなリズムとピアノ、ギターがかっちりとしたバッキングをするなかで流麗なテナー・サックスが伸びやかに歌い、跳ねる1曲目「Dream Weaver」。大きな拍手を受けながらリードをギターに渡す。テレキャスターのクリーンなトーンが心地よいギターソロをピアノが引き継いでいき、そしてロイドのサックスへと戻る。


リズム感の際立ったベースのソロをフィーチャーしてエンディングへ。 2曲目の「Defiant」はスローなバラード。分散和音でバッキングするギターが冴えている。サックスがテーマを吹いた後はピアノがホール・トーンなどを織り交ぜながら現代的ジャズと古典的ジャズの両面を一度に弾きこなして会場を沸かせる。次いでギターが緩急自在なプレイを見せる。この辺りのテイストはハンガリーの名手、ガボール・ザボに近い。




次の「Lift Every Voice And Sing」で曲調は一転して明るいラテン風に。曲の冒頭はロイドと2人のみで、ドラムスがシンバル類で細かくパーカッション風にバッキングする。徐々にベース、ギター、ピアノが入り、やがてフルスウィングするとやがてギターへソロを渡す。次いでピアノのソロに移るのだが、ここではモダン・ジャズのテイストたっぷりに自在に弾き連ねる。そして手数の多いドラムスのソロ。ダブルキックを多用したあたりは現代的なドラミングなのだが、ジャズ・テイストを失わず軽快に叩く様に会場が湧く。



再びスローなバラード「Hyperion With Higgins」でロイドのサックスが渋い音色を聴かせる。ドラムスはスティックをブラシに持ち替え、柔らかいリズムのなかにアクセントを入れつつサポートする。安定感のあるベースが際立つ。ギター・ソロをバッキングするベースとドラムスの絡み合いは見事だ。ピアノソロでは不協和音を入れて曲に違った表情を加えるあたり、センスの良さを感じさせる。続くベースソロはフリーフォームながら叙情的なメロディーも聴かせる。





「Requiem For Kiyoshi Koyama San」~「Booker's Garden」ではロイドがフルートに持ち替えてどこかの民謡を思わせる旋律を奏で、ベースがミッドテンポのラインでリズムを加えるとドラムス、ギター、ピアノも加わってクールなバラードへと展開する。ギターがソロをとる間、ロイドは両手にシェイカーとマラカスを持ってドラマーの横で一緒にリズムを取っている。ソロがピアノに渡ると今度はピアノのマイクに向かってシェイカーとマラカスで味付けをする。このピアノ・ソロでのドラマーの当意即妙なサポートは見事。ロイドが再びフルートでメロディーを奏で、曲は大団円を迎えそしてステージを終えるのだった。







Members
チャールス・ロイド(Sax, Fl)
ジュリアン・ラージ(G)
ジェラルド・クレイトン(P)
ルーベン・ロジャース(B)
エリック・ハーランド(D)


SET LIST
1. Dream Weaver
2. Defiant
3. Lift Every Voice And Sing
4. Hyperion With Higgins
5. Requiem For Kiyoshi Koyama San
6. Booker's Garden



カマシ・ワシントン
Kamasi Washington


現代ジャズの立役者とも言うべき気鋭の新世代コンポーザー・サックス奏者がジャズのこれまでの歩みを踏まえながら、その未来形を提示する







「偉大なチャールズ・ロイドと同じステージに立てて光栄です」との謝辞を述べるカマシ・ワシントン。ダブル・ドラムスにキーボード、アップライト・ベース、トロンボーン、ボーカルという異色の編成で、いきなり「Show Us The Way」でトップ・スピードのハードな演奏を繰り広げる。革命家を思わせる、布で顔を覆いベレー帽を被ったベースのマイルス・モズレーが手数の多いソロに続いてボウイングとワウを使った斬新な音で会場を驚かせる。これには観衆も大きな拍手を惜しまなかった。続くトニー・オースティンのドラム・ソロはロック・テイストも感じさせるエモーショナルなドラミングだ。ホーンとボーカルのテーマに戻り、曲はエンディングへ。





カマシの紹介で彼の父であるリッキー・ワシントンがフルートとソプラノ・サックスを手にステージに登場。2曲目の「Malcolm's Theme」ではソウルフルなパトリス・クインのボーカルに続いてリッキー・ワシントンのフルート・ソロが響き渡る。年齢を感じさせないロング・ブレスはさすがだ。ボーカル、ホーンのテーマに続いてピアノをバックにした叙情的なソロ・ボーカルへと続き、エンディングへ。







続いてライアン・ポーターのトロンボーン・ソロをフィーチャーしたアップ・テンポなナンバー「The Psalmnist」では日本人キーボーディストのビッグユキも多彩な音色でシンセサイザーの妙技を披露する。続いてもう1人のドラマー、ロナルド・ブルーナー・ジュニアのソロ。こちらはライドを効果的に使った手数の多いテクニカルなドラミングを聴かせる。激しいキックの連打にドラムスを据えつけたライザーもぐらぐらと揺れている。   

弓弾きのベースソロで始まるアルバム「Harmony of Difference」からの曲「Truth」は、カマシによれば2017年に彼が書いた曲で、多様性への讃歌だとのこと。中盤からのエコーをかけたサックスソロの音色が幻想的な美しさから次第に激しく力強いリズムを引き寄せていく様はこのステージのハイライトの一つと言える。

ドラムスとベースで始まるミッドテンポの曲「The Space Travelers Lullaby」はホーンとボーカルがユニゾンで奏でるテーマが美しい。ライアン・ポーターのトロンボーンソロは小技の利いた名演だ。続くベースソロは中盤でボウイングを取り入れ、またフランジャーを使うなど構成に工夫が凝らされたものだ。



ステージ最後となる「Fists of Fury」はエコーをかけたサックスソロで始まり、次第にリズムが加わって曲の姿が現れてくるとパトリスの力強いボーカルに続き、BIGYUKIのピアノとキーボードのソロがフィーチャーされる。キーボードでピアノの音にポルタメントの効いたシンセサイザー音を被せた音作りは効果的かつエモーショナルなフレージングと相俟って会場を沸かせた。ちなみにこの曲はブルース・リーの「Fist of Fury(ドラゴン怒りの鉄拳)」からタイトルが付けられている。続くカマシのサックスソロも見事なまでに情熱的だ。そして圧巻のステージは総立ちの観客に見送られて幕となった。





Members
カマシ・ワシントン(Sax)
リッキー・ワシントン(Fl, S.Sax)
ライアン・ポーター(Tb)
ビッグユキ(Key)
ロナルド・ブルーナー・ジュニア(D)
トニー・オースティン(D)
マイルス・モズレー(B)
パトリス・クイン(V)


SET LIST
1. Show Us The Way
2. Malcolm's Theme
3. The Psalmnist
4. Truth
5. The Space Travelers Lullaby
6. Fist of Fury



Sep. 1 (Sat) evening


スナーキー・パピー
チック・コリア・エレクトリック・バンド withフランク・ギャンバレ、エリック・マリエンサル、ジョン・パティトゥッチ and デイヴ・ウェックル



スナーキー・パピー
Snarky Puppy


ジャズをベースにファンク、ラテン、ロックまでも取り込んだミクスチャー・サウンド。絶大な人気を誇る大所帯バンドの熱くてクールなステージ







キーボードのビル・ローレンスのピアノソロで幕を開けるSnarky Puppyのステージ。ベースのマイケル・リーグを中心に9人のメンバーが居並ぶ姿はそれだけで壮観だ。1曲目の「Ready Wednesday」でラテン・リズムをベースにクラシックやモンド、アンビエントを混ぜこぜにした彼ら独自の音世界が展開していき、そのなかに観客も吸い込まれていくようだ。


続く「Gemini」ではボブ・ランゼッティがボトルネック・ギターを弾き、トランペットのマイク・マーハーとドラムスのジェイムソン・ロスがスキャット・ボーカルを聴かせるイントロ部からボビー・スパークスがハモンドで吠える終盤まで、一定のリズムで繰り返れるフレーズはミニマリスティックなのだが、そのなかを変幻自在に各楽器が泳ぎ回る様はクールな水のなかを思わせる。




クリス・ブロックのサックスが一転してメインストリーム・ジャズの世界へ会場を引き込んでいくと思いきや、中盤から強烈なファンクが炸裂、これにも観客は大喜びだ。これは最新アルバムからの曲「Bad Kids To The Back」。


次の「Xavi」ではドラムスとベースがヘヴィーなリフを作り、フルートが絡み、そこへギターがのしかかってくるという趣であり、全体として彼ら独特のミクスチャー・ミュージックが高速リズムの上で展開する。ここでの ビル・ローレンスのエレクトリック・ピアノソロは秀逸だ。






「Palermo」ではサンプリングした電子音でループ・トラックを作り、その上にビートを重ねていくという手法でグルーヴを生み出したところへトランペットとサックスが掛け合いを聴かせる。中盤のブレークでのアフリカン・ビートからキーボードのアンサンブルでチルアウトする場面はいかにも彼ららしい現代ジャズの展開と言えよう。観客の手拍子に乗せてマルセル・ウォロースキがパーカッション・ソロを披露してそのままエンディングへ。


マイケル・リーグの「これまでは新作の『カルチャー・ヴァルチャー』からいっぱいやりましたが、ちょっと前の曲に戻ります」というコメントで「Lingus」のイントロが始まると会場から拍手が湧き起こる。中盤でジャスティン・スタントンが吹くフリューゲル・ホーンとトランペットのメローな響と秀逸なフレージングは見事。そのままエンディングへとなだれ込む熱演に会場は大いに湧き上がった。



 

ボビー・スパークスのキーボードで奏でるファズ・ギターのクールなイントロが奏でられると一転してサンタナを彷彿とさせる熱いラテン・ロックが繰り広げられるラスト・ナンバーの「Sleeper」。途中にメンバー紹介を挟んでSnarky Puppyならではのミクスチャー・ワールドがパワー全開でホール中を駆け抜ける様はまさに爽快だ。








Members
マイケル・リーグ(B)
マルセル・ウォロースキ(Per)
ボブ・ランゼッティ(G)
ビル・ローレンス(Key)
ボビー・スパークス(Key)
ジャスティン・スタントン(Key, Tp)
ジェイムソン・ロス(D)
クリス・ブロック(Aax, Fl)
マイク・マーハー(Tp)


SET LIST
1. Ready Wednesday
2. Gemini
3. Bad Kids To The Back
4. Xavi
5. Palermo
6. Lingus
7. Sleeper




チック・コリア・エレクトリック・バンド withフランク・ギャンバレ、エリック・マリエンサル、ジョン・パティトゥッチ and デイヴ・ウェックル
The Chick Corea Elektric Band with Frank Gambale, Eric Marienthal, John Patitucci and Dave Weckl


1986年のファースト・アルバムのリリースから33年、ジャズ・ロックの最先端を走り続けてきたチック・コリア・エレクトリック・バンドがオリジナル・メンバーで登場







「オリジナルのエレクトリック・バンドです」というチック・コリアの紹介から始まるステージに期待が高まるなか、定番曲ともいうべき「Charged Particles」が始まると、エネルギー感.満載の演奏が炸裂する。年齢を重ねても超絶フレーズを軽々と演奏する彼らには舌を巻くばかりだ。


続いての「Trance Dance」はコリアのエレクトリック・ピアノで始まり、ドラムスとベースが入ってくると静から動へと転換する。コリアのピアノは彼の代名詞ともいうべきスパニッシュ・テイストを漂わせていて、サックスとギターがユニゾンで奏でるメイン・フレーズを際立たせている。マリエンサルのサックス・ソロに会場は大いに沸き立ち、続くパティトゥッチのベース・ソロも大きな拍手で称えられた。


「古いビーバップの『CTA』という曲をアレンジしたので聴いてください」というコリアの紹介で始まると、確かにビーバップなのだが、やはりチック・コリアの曲に聞こえてしまうのは彼の個性とメンバーの卓越した演奏力のせいだろう。マリエンサルの熱いサックス・ソロの後はギャンバレ、パティトゥッチと続き、そしてウェックルが締めくくる。

「Alan Corday」ではコリアはアコースティック・ピアノ に、ギャンバレはアコースティック・ギターに持ち替える。それでも超絶技巧はとどまることを知らず、ベースとのユニゾンで高速フレーズを繰り出してくる。中盤ではマリエンサルがソプラノ・サックスでソロを取り、華やかな彩りを加える。パティトゥッチのソロも繊細なニュアンスをちりばめた名演だ。


次の曲はエレクトリック・バンドの同名のファースト・アルバムからコリアが京都滞在の際に銀閣寺に捧げて書いたという「Silver Temple」。エレクトリック・ピアノに戻り、オリエンタル・フレーズを交えたイントロから都会的なフュージョンへと展開していく。前半はコリア、パティトゥッチ、ウェックルのトリオで演奏し、チェンジアップする中盤からギャンバレとマリエンサルが絡み出し、コリアもシンセサイザーを使い出す。マリエンサルのサックス・ソロは熱を帯びて鬼気迫るようだ。続くギャンバレ、パティトゥッチ のソロも冴え渡り、会場は総立ちに。



アンコールとしてファースト・アルバムから「Got A Match?」。コリアはTokyo Jazzの会期中、ヤマハがケヤキ並木でプロモーションしているショルダー・キーボードを演奏するのだが、短いフレーズを弾いては観客に歌わせるというコール・アンド・レスポンスで会場は否が応でも湧き上がる。そしてバンドが入ると一気に大フュージョン大会へとなだれ込むのだ。これでもかというコリアのソロをマリエンサルがシャッフルで引き継ぎ、またチェンジアップしながら熱を帯びていくと会場から大きな拍手が沸き起こる。

次いでパティトゥッチがソロを取り、いつもながらの細かい技を見せつける。そしてギャンバレにソロのバトンが渡されるとブルージーなフレーズで始め、やがて得意のスウィープ奏法を交えた高速フレーズでひた走る。これにも会場は賞賛の拍手と歓声を惜しまない。ウェックルの短いソロをいくつか挟みながら曲は圧巻の4人ユニゾンへと突き進み、コリアとウェックルのコンビネーションをひとしきりフィーチャーしたあと大団円を迎え、満席のNHKホールを総立ちにさせたのだった。



Members
チック・コリア(Key)
フランクギャンバレ(G)
ジョン・パティトゥッチ(B)
エリック・マリエンサル(Sax)
デイヴ・ウェックル(D)


セットリスト:
1. Charged Particles
2. Trance Dance
3. CTA
4. Alan Corday
5. Silver Temple
6. Got A Match ? (ENCORE)


レポート:Tatsurou Ueda
画像提供:第18回 東京JAZZ
撮影:中嶌 英雄、岡 利恵子
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