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LIVE REPORT


Hiram Bullock
2003年6月17日 場所:モーション・ブルー・ヨコハマ


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ジャズ、ブルースから高速メタルフレーズまで爆発的に弾きまくる!
フュージョン界で最も多能なギタリスト、ハイラム・ブロックが放つパワーステージ






Official Site: http://www.hirambullock.com/

のそりと現れたハイラム・ブロック。日本語まじりに客席とやりとりしながらギターのセッティングを終えると、ストラトキャスターらしいクランチーな音でリフを刻み出す "Got to get your jolly's"。バンドも良い状態で乗っており、一曲目からすでにテンションは高まっている。中間部のソロでは左手だけのプリング・オフやハマリングで数小節弾き流してみせるなど、ベテランらしい見せ方である。軽いリフで始まった曲だが後半部に向けて白熱して行き、斉藤有太のB3ハモンドのソロをフィーチャーするが、サポートにまわったハイラム、ベースの沖山優司、ドラムスのチャーリー・ドレイトンの3人はパーマネント・バンドのように息の合ったリズムを叩き出している。

ステージの端に腰を下ろして"Hurricane"のブルージーなリフを弾き始めるハイラム。ステージに上がって歌い出すとシカゴ・スタイルのブルースに伸びのあるギタートーンが広がる。ギターソロはジミ・ヘンドリックスかあるいはバディ・ガイを思わせる迫力で、思わずのけぞってしまいそうになる。

Hiram Bullock(Guitars) Charley Drayton(Drums)


ここで、飛び入りでビッグアーティストが登場。たまたま居合せたというジャズ・フュージョン界の大物、ルー・ソロフがステージへ招かれる。これは嬉しいハプニングである。ルー・ソロフはブラッド・スウェット・アンド・ティアーズやマンハッタン・ジャズ・クインテットなどのバンドメンバーとして、またカーラ・ブレイやギル・エヴァンスとの共演で知られるトランペット・プレイヤーである。ここでは2人のデュエットが披露された。ハイラムはアコーステック・ギターに持ち替え、名曲 "Here's that rainy day" を弾きだす。 ルー・ソロフは往年のままの音をきかせてくれた。フリューゲル・ホーンを思わせるようなソフトな音から、彼のトレードマークのきらびやかな高音、さらにはこれも十八番のコーヒーカップを使ってのミュート・トーンまで充分に堪能させてくれた。

バンドが再登場し、会場の手拍子に合わせてニューアルバムからタイトル曲の"Try livin' it"。スロー・コンテンポラリー・ジャズといった趣の曲だが、中間部でファンキーな盛り上がりを見せると再びルー・ソロフがステージに上がり、まさに入魂と言うべきハイトーンのブルー・ノートで会場を沸かせてくれた。

「この曲はジョージ・ブッシュに捧げてやるんだ。ホワイトハウスに送ってやるよ。曲のタイトルは "Greed" (欲)だ」と、最近の世相ならではのハイラムの紹介で始まるこの曲はドラマーのチャーリー・ドレイトンによるもの。へヴィーなファンクである。チャーリーがヴォーカルをとり、ハイラムはギターで吼えまくっている。ワイヤレス・トランスミッターの機動性を生かして客席へ降りて行くとシートの上に立ちあがって、まさに仁王立ちで弾きまくってくれる。それにしても辛らつな内容の歌詞ではある。

 

 
斉藤有太(Keyboards)
沖山優司(Bass)

キーボードの斉藤有太のアルバム「Y」から「列車」。斎藤有太がピアノとボーカルでリードし、ハイラムはAtelier Z の白いストラトキャスターでバックにまわる。ハイラムは大阪出身というが、日本語で歌うバックコーラスなど手馴れた感じを受ける。曲自体は小洒落たポップスなのだが、ハイラムとチャーリーは構わずロックして、ハイラムのボトルネックソロに至ってはニュー・オーリーンズ・ブルース・フュージョンである。曲の後に斎藤有太を指してハイラム曰く、「彼はニュー・オーリーンズ生まれの日本人です」

ボリューム奏法とコーラス・エフェクトで奏でるギターに導かれて始まる "Change"。牧歌的なバラードの導入部から、ギターソロに入るとパワー全開の白熱したフュージョンに変わる。ベースの沖山優司のサポートぶりが実に好感が持てる。再び牧歌的な雰囲気に戻ってエンディングとなる。


前曲に続けて長いドラム・ロールで "Da Alley" につなげる。ソウルフルなファンク・フュージョンである。中間部で三度ルー・ソロフが登場、ファンクのリズムに乗せて短いフレーズをつなげてゆき、途中でマウスピースを換えながらジャズテイストたっぷりのソロを展開するところはさすがである。バンド全体が更にテンションを上げてゆくが、それをスラップで盛り上げて行くベースの沖山優司のサポートに注目したいところである。斎藤有太のシンセサイザー・ソロと、それに合わせてリフをアドリブで作ってゆくハイラムとルーのバッキングも聴きどころであった。

ギターを弾きながらアンコールに応えてハイラムが客席後方から現れ、飛び入りゲストのルー・ソロフも加えたメンバーがステージに向かう間、弾き語りに歌い出すのはヘンドリックスの "Little Wing"である。まずはルー・ソロフのソロから。リリカルなメロディーラインに続けて、彼らしい反復する短いフレーズから高いロング・ノートへもって行くと一気にクライマックスへ上り詰める。ハイラムのヴォーカルに戻るとリズムはダブに変化する。そしてハイラムの本領発揮、伸びるトーンのギターが炸裂し、ルーのトランペットとのデュエットを交えてクライマックスの中エンディングへ。

ジョン・マクラフリンのマハヴィシュヌ・オーケストラに影響を受け、パット・メセニーに師事したというハイラム・ブロックは、デイヴィッド・サンボーンやスティーリー・ダンなどのビッグ・アーティストとの共演を通じてジャズからへヴィーメタルまで様々なスタイルを弾きこなす達人であり、またその爆発的エネルギー感を持つギタートーンから「フュージョン界の暴れん坊」の異名をとるが、今回のライブではその暴れん坊ぶりを充分に発揮してくれた。ルー・ソロフとはギル・エヴァンスとのつながりだそうだが、はからずも二大フュージョン・スターの競演となったのは実に嬉しい驚きであった。


Members:
Hiram Bullock(Guitars)
Charley Drayton(Drums)
沖山優司(Bass)
斉藤有太(Keyboards)


< Set list >
1. Got to get your jolly's
2. Hurricane
3. Here's that rainy day
4. Try livin' it
5. Greed
6. 列車
7. Change
8. Da Alley

Encore)
Little Wing

Report by Tatsuro Ueda
Photography by Asako Matsuzaka, Yoko Ueda
Edit & design by Asako Matsuzaka
Many thanks to
Motion Blue yokohama

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