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Concert Report




ドイツ・グラモフォン創立120周年 Special Gala Concert
Presented by 小澤征爾 & サイトウ・キネン・オーケストラ


会場:サントリーホール
2018年12月5日



最高峰のアーティストたちによる夢のような空間
深い感動を呼んだ"奇跡の一夜"







“奇跡の一夜”と言われたコンサート。最高峰のアーティストたちによる、それは夢のような空間だった。


世界各国で創立120周年記念コンサートを開催しているドイツ・グラモフォンによるガラ・コンサートが日本でも開催され、そこに小澤征爾とサイトウ・キネン・オーケストラ、そしてアンネ=ゾフィー・ムターが出演というニュースが飛び込んできた。


先のセイジ・オザワ 松本フェスティバルで聴くことができなかった小澤征爾&サイトウ・キネン・オーケストラの演奏を東京で聴くことができる喜び、そしてアンネ=ゾフィー・ムターとの共演という夢のような顔合わせ、本当に奇跡のような話で、当日のステージへの期待で胸が膨らんだ。


小澤征爾氏、自らが語る映像はこちら

ドイツ・グラモフォン創立120周年 Special Gala Concert 特設サイト


この日のステージはイエローの花々とグリーンで美しく飾られ、指揮者ディエゴ・マテウスとSKOメンバーが登場すると大きな拍手が沸き上がる。オープニングはチャイコフスキーの歌劇「エフゲニー・オネーギン」よりポロネーズ。溌剌と弾むように指揮するマテウスは音楽を全身で楽しんでいるようだ。マテウスは国内外で高い人気を誇るベネズエラ出身の指揮者。これまでもSKOのゲストコンダクターとして共演しており、このオーケストラとの相性の良さが感じられる。抑揚豊かな深みのあるヴィオラと表情豊かに歌うチェロ、そして全体のリズムを見事に締めるティンパニが印象的。スペシャルガラの幕開けにふさわしい、輝かしい演奏だった。


第1部の2曲目は同じくチャイコフスキーの交響曲第5番。冒頭、「運命の動機」が柔らかく深みのある音色で静かに綴られる。抑揚の巾を保ちながら次第に音量を増し、エネルギッシュなオーケストラサウンドが鳴り響く。最高潮に達した次の瞬間の静寂、その緩急の対比は見事。つやのある弦アンサンブルは表情豊かで本当に美しい。マテウスは全身を使い情熱を込めて指揮していく。この1楽章からオーケストラの一体感が増し、なにか、生命が吹き込まれたように感じる。

やや哀しみをたたえ、穏やかに流れる優美なメロディーと、突如、激しく展開される「運命の動機」の対比が素晴らしい第2楽章は絶妙にコントロールされたホルンが秀逸。このオーケストラの精神性の高さを感じ、深い感動を覚えた。

ゆったりとしたワルツにのって展開した第3楽章。のどかな空気のなか、どこまでも広がる花畑といった情景が浮かぶ。ちょうどこの日のステージは花とグリーンで縁どられていて、 まさに花畑を舞う蝶のような感じ。木管とヴァイオリンが奏でる繊細で早いパッセージがとても印象的だった。

重厚感のある弦が奏でる「運命の動機」で始まる第4楽章では、より集中力とエネルギーを増したトゥッティの迫力が凄い。全身全霊で奏される壮大なサウンドでオーディエンスを引き込んでいく。ラストは高らかに威風堂々と演奏される「運命の動機」が鳴り響くなかで最高潮に達し、フィニッシュとなった。深い感動を呼ぶ、圧倒的であまりにも見事な演奏にいつまでも拍手が鳴りやまなかった。

(第二部から天皇皇后両陛下が会場に入られ、割れんばかりの拍手で迎えられた)


第2部からアンネ=ゾフィー・ムターが登場し、まずは、S. バッハ「ヴァイオリン協奏曲 第2番」を弾き振りで演奏した。室内SKOをぐいぐいと引っ張っていく。特に第2楽章の表現力が秀逸で、さわやかな室内オケのサウンドとムターの洗練されたヴァイオリンを堪能した。

続くベートーベン「ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス 第1番」では再び指揮のマテウスが登場。SKOの奏でる柔らかなハーモニーと抜けよくのびのあるムターヴァイオリン、調和のとれた美しいアンサンブルが心地よい。情熱的なカデンツアではたっぷりとした和音を響かせ、美しい高速パッセージを鮮やかに聴かせた。


そしてこの日のクライマックス、サン=サーンス「序奏とロンド・カプリチオーソ」で、盛大な拍手に迎えられて小澤征爾が登場。SKOとムターは初共演で、「指揮するのが楽しみ」と小澤本人が語っていたという。

情熱的なこの曲を、あえて音量を抑えた絶妙なアンサンブルで聴かせる。小澤が中心に立つと、「特別ななにか」が生み出されていくようで、見事なSKOのサウンドがさらに向上していく。そのサウンドの上で自在に奏するムターもオケに呼応するかのように、繊細な弓捌きで一音一音を重ねていく。すべてが集中した緊張感のなかで、美しくて精巧なガラス細工のように、重ねられる音の層が抑揚豊かに流れる。心に深く響く染み渡るような演奏でオーディエンスを魅了した。


感動と歓喜の拍手は10分以上も続き、小澤、ムター、SKOメンバーは何度もステージ登場して鳴りやまぬ拍手に応えていた。その間、両陛下も立ち上がられて最後まで一緒に拍手をされていたのが感慨深かった。


この「奇跡の一夜」の演奏は、後日、ドイツ・グラモフォンより全世界でリリースされる予定とのことなので、ぜひ楽しみに待ちたい。

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小澤征爾とアンネ=ゾフィー・ムターがステージを去り、その拍手がようやく静まったと思った、次の瞬間、全観客が両陛下をたたえての拍手がわきおこった。この拍手も5分ほど続いたか、その間、両陛下は会場全体に向けて手をふられ、応えられていた。

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◎当日のコンサート音源が2019年1月1日に全世界緊急リリースされることになりました!


“創立120周年を迎えた2018年に、世界各国で記念コンサートを開催した同レーベルが、12月5日に東京・サントリーホールで実施し、天皇皇后両陛下もご覧になられた『ドイツ・グラモフォン創立120周年 SPECIAL GALA CONCERT』のコンサート音源を、2019年1月1日に全世界緊急リリースすることが決定いたしました。

小澤征爾とアンネ=ゾフィー・ムターの共演が発表されると、ドイツ・グラモフォンの公式SNSへも問い合わせが殺到。チケットが一般発売後10分で完売するなど既に話題になっていた本公演が終わるやいなや、“ヴァイオリンの女王と本物のマエストロの共演”や“偉大なる指揮者”など世界中のSNSでも話題となり、その反響を受け、ドイツ・グラモフォンは同レーベルにとってもきわめて異例なスピードで本公演の模様を収録した『ドイツ・グラモフォン創立120周年 SPECIAL GALA CONCERT』を全世界緊急リリースすることを決定いたしました。

ドイツ・グラモフォンの社長であるクレメンス・トラウトマンも今回の異例の緊急リリースに関して「世界中で開催している記念コンサートの中でも特に反響が多く、異例のことですがより多くの人にいち早く聴いていただくために緊急でリリースすることにいたしました」とコメントしています。”(ユニバーサル ミュージック合同会社 プレスリリースより)


商品詳細はこちら >> ドイツ・グラモフォン創立120周年 Special Gala Concert
Presented by 小澤征爾 & サイトウ・キネン・オーケストラ コンサート音源 全世界緊急リリース!




<プログラム>

第1部
チャイコフスキー:歌劇《エフゲニー・オネーギン》 作品24 ポロネーズ
チャイコフスキー:交響曲 第5番 ホ短調 作品64

指揮:ディエゴ・マテウス


第2部
J.S バッハ:ヴァイオリン協奏曲 第2番 ホ長調 BWV1042(指揮者なし)
ベートーヴェン:ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス 第1番 ト長調 作品40

ヴァイオリン独奏:アンネ=ゾフィー・ムター
指揮:ディエゴ・マテウス

サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ イ短調 作品28

ヴァイオリン独奏:アンネ=ゾフィー・ムター
指揮:小澤征爾


サイトウ・キネン・オーケストラ メンバー表




レポート:Asako Matsuzaka
撮影:Ryota Mori, Michiharu Okubo


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