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LIVE REPORT

KIKI BAND
October 12 2004 at 初台 DOORS


地の底から湧き上がる熱いマグマの上を高速でサーフィンする変幻自在のカメレオン。KIKIバンドの鬼気迫る演奏を聴け!

1998年に最少構成で最強のバンドを作ろうと思い立ったサクソフォニスト梅津和時の呼びかけで集まった鬼怒無月(ギター)、早川岳晴(ベース)、新井田耕造(ドラムス)。それぞれがソロイストとして卓越した技術と音楽性を備えた4人が世界を股にヘヴィー・グルーヴを繰り広げて5年になろうとしている。その間、4枚のアルバムをリリースし、アフリカ、アジア、ヨーロッパで数え切れないライブを展開してきた彼らが、3週間にわたる東西ヨーロッパ・ツアーを終えて凱旋公演を行なった。会場は初台にあるライブハウス、「初台Doors」である。東京オペラシティーの向かい側に位置する好立地と、格安のドリンクや分煙のライブフロアなど嬉しいサービスが心地よいライブハウスである。

今回のライブにはオープニング・アクトに狂気の吟遊詩人「日比谷カタン」を迎えて行なわれた。

いつものように無言でステージに現れ、やおら弾きだす日比谷カタン。チューニングしながらの流し弾きだが中東の雰囲気も漂わせている。語りを入れた不条理劇の始まりと思いきや、どこかで聞いた台詞とメロディー…これは杉良太郎ブームを巻き起こした往年の人気時代劇、「大江戸捜査網」のテーマではないか。実に巧みな面白さだ。
オープンチューニングに変えて「ネクロヴァルセ」。捉えどころのない曲調はアルテュール・アッシュあたりに通ずるものがある。続く「スキゾフレニイアパルトメント」はブラジリアン・ニューミュージック風なハーモニーが親しみやすいのだがこれもタイトル通り奇妙な曲である。
最後はドラムスに奥村純を加えての「ヲマジナイ」。ドラマーとのデュオというのは今までになかった試みだが、導入部では多少違和感があったものの中間部のフリーフォームな部分ではリズムの絡みが楽しめる演奏となった。ループ・エフェクトの使用も効果的で、超絶技巧ギターと万華鏡ヴォーカルはさらに凄みを増したようだ。


「帰国したばかりでまだ時差ぼけも治りませんが…」という梅津和時の淡々とした口調で始まったKIKI Bandのステージは、演奏が始まると一転して熱い噴煙を噴き上げる灼熱の噴火口へと様相を変えたのであった。いきなりハードなリフでの幕開けは「クローラー」である。5拍子のメタル・フュージョンとでも言うべきか。早川岳晴のうねるファズ・ベースと驀進する梅津のサックス。鬼怒無月のギターと新井田耕造のドラムスはステディそのもののリズムを叩き出している。地階の会場のその下から噴き上げるマグマが炎を上げるかのようなステージに会場も興奮を隠せない。

ドラムスのビートから入る次の「ティハイ・ソング」はヘヴィー・クレズマとでも形容すべきか。ラーガ風の鬼怒のギター・パートに続いてこれも5拍子で入るリフが小気味良い。続く梅津のサックス・ソロはブルガリア的なフレーズを交えた情熱的なもので、早川のベースと相俟ってぐいぐいと惹きつけるオーラを放っている。

梅津のサックス・ソロが正統派ジャズとバルカン・ジプシー・ダンスのミクスチャーを聴かせ、梅津の並々ならぬ腕前を見せつける「イズモヤ」。ブルージ―な鬼怒のギターと削ぎ落としたような冴えを見せるドラムスとベースは浮遊感すら覚える格好良さである。


次は鬼怒の得意とするミニマルなリフと梅津のフリーフォームなソロで始まる「I Like Your Nerve」。早川のベースも彼らしいユーモアのあるフリーラインである。ドラムスは控えめながら充分という達人の技だ。スピードに乗って展開するのはアヴァンギャルド高速へヴィー・ポルカとでもいうべき痛快な曲。これは面白い。

ヨーロッパ・ツアーの様子をスナップショットで綴った写真がインターミッションでの上映されたあと、セカンド・セットの一曲目は早川の曲、「ダウザー」。ミディアム・テンポのへヴィー・ジャズでウェザー・レポートあたりにも通じるダークさと熱さが綯い交ぜになったナンバーだ。闇の中をさらに暗いところを求めて歩いてゆくような雰囲気とでも言えば、あたらずとも遠からずか。

次は鬼怒の曲、「ビバ中央線」。鬼怒はギターをレス・ポールに持ち替えている。スネアの甲高いショットを響かせるドラムスのドライブ感で会場は皆タップを踏んでいる。早川の達者なソロのあとはスライド・ギターが炸裂する。ヘヴィー・ザイデコといった趣きの痛快ダンス・チューンといっても良いだろう。

ジャコ・パストリアス風なベース・ソロで始まる「Vietnamese Gospel」。ベースのハーモニクスと和音が沖縄音階を垣間見せたかと思うとドラムスのフィルで流麗なサックス・ソロへと展開するスロー・バラードである。ストラトキャスターらしいクリアなトーンで展開するギター・ソロが特筆すべき素晴らしさで、日本的情感とブルージーな熱気が入り交じった好演である。そして梅津のサックスのエモーショナルな展開には絶妙なドラムスとベースのサポートと相俟って観客を惹きこんで止まない。

ラストは「地上の月-The Moon on the Ground」。リフを刻むベースの上にアブストラクトなギターが乗り、ドラムスがリズムを形作って行くとサックスとギターのユニゾンでジプシー風の印象的なメロディーが奏でられ、クールな情熱に満ちた世界へと突入して行く様はスリリングだ。ドラムスの細かいシンバル・ワークにも注目である。決して手数が多いわけではないが的確な構成で表情豊かに曲を盛り上げて行くテクニックはさすがだ。

会場の声援に応えて再びステージに登場する「KIKI Band」の4人。アンコール曲は「空飛ぶ首」である。アップ・テンポなハード・ナンバーで地を揺るがすファズ・ベースと疾走するサックス、細かく刻むギターにスピード感あふれるドラムスのビートが小気味良い。いくつかのリフが交互に現れてリズムがシンコペーションする様は熱いスリルに満ちている。ユニゾンでサックス、ギター、ベースがリフを展開するパートではどんなヘヴィー・メタル・バンドもかなわないであろうハードな格好良さであった。

スワヒリ語でキパーラ(ハゲ)、キニョンガ(カメレオン)、キゲウゲウ(変幻自在)の頭文字をとったという「KIKI Band」だが、はたしてハゲで変幻自在のカメレオンは最高に格好良いのだった。世界を股に活躍する彼らが日本のミュージシャンの心意気を遠い世界にまで広めてくれたであろう事は疑いなく、それを思うとなんとも痛快なのである。

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新井田耕造氏は2004年でKIKI BANDを脱退されました。
2005年のKIKI BANDについて、梅津和時さんがご自身のホームページに掲載されたメッセージを転載させていただきます。

2005年のKIKI BAND

新井田耕造氏がKIKI BANDを辞め、現在、ドラマーを探しつつ、これからの方向を模索中です。約半年後の6月あたりをメドに活動を再開したいと考えております。再び皆様の前に現れる時はより強力なバンドとなって登場したい、と思っております。どうぞその日を楽しみに、もうしばらく時間をください。

2005/1/20 梅津和時

KIKI BANDに関する詳細は以下をご覧ください。
Site u-shi > KIKI BAND
http://webclub.kcom.ne.jp/mc/u-shi/kiki_index.html

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Musicians

オープニング・アクト:
日比谷カタン(ギター、ヴォーカル)
奥村純(ドラムス)

KIKI Band
梅津和時(サックス)http://www.j-music.com/umezu/j/
鬼怒無月(ギター)
早川岳晴(ベース)
新井田耕造(ドラムス)

Set List

日比谷カタン:

大江戸捜査網のテーマ
ネクロヴァルセ
スキゾフレニイアパルトメント
ヲマジナイ(with 奥村純)

KIKI BAND:

1st Set:
クローラー
ティハイ・ソング
イズモヤ
I Like Your Nerve

2nd Set:
ダウザー
ビバ中央線
Vietnamese Gospel
地上の月-The Moon on the Ground

Encore
空飛ぶ首


Report by Tatsurou Ueda
Photograpy by Asako Matsuzaka
Design by Asako Matsuzaka
Special Thanks to Yoko Tada

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