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LIVE REPORT

SHEILA E
10 April, 2004 at duo Music Exchange


音楽への、音楽で出来ることへの熱い想いを感じた夜。最終日らしくサプライズ・ゲストも登場!







筆者がシーラ・E.を観るのはこれで3回目となる。がしかし、1回目は86年、プリンス&ザ・リヴォリューション初来日公演のスペシャル・ゲスト、2回目は89年、プリンスのバンド・メンバー。つまり、失礼ながら「彼女を観る」のを主たる目的として会場へ足を運ぶのは今回が初めてとなる。しかも15年ぶりだ。それに起因するとんちんかんな記述があるかもしれない。熱心なファンの方々に向けて、まず、この点を正直に告白してからペンを進めたい。

今回のメンバーはシーラ・E.を含めて6人。下手よりキーボード、ヴォーカル、ギター、サックス、ベース、そして上手にドラマーのシーラ。舞台のはじにリーダーが居るというのはどうなのだろう?と思ったのだが、始まってみてわかった。全員を一度に見渡せるというメリットがあるのだ。

SEと共に彼女の語りが流され、メンバーが登場、シーラがドラム・セットに座り叩き始める。「え?」一瞬耳を疑った。何とプリンス・ファミリーのジャズ・ファンク・バンド、マッドハウスの「Six」だ。サックスのエディ・M.を主役として、原曲にかなり忠実な演奏が展開された。メイシオ・パーカー直系のブロウとアクション。エディのエンターテイナーぶりはさすがだ。シーラはメンバーを常に視野に入れ、アイ・コンタクトを交わす度に笑っている。心地良い空気が会場全体に伝わってくる。

次はシーラのアルバムから「Whatcha Gonna Do」「Closer」の2曲。「Whatcha Gonna Do」ではキャスリーン"キャット"ダイソンの歯切れの良いギターワークが光る。そしてこの曲では早くもシーラのドラム・ソロが組み込まれていたが、これが圧巻。下半身はドラム、上半身はパーカッションと言えば良いのだろうか、一人二役のような叩きっぷりだった。ソロ終盤は手でタムとシンバルを鳴らす。傑作ライヴ・フィルム、プリンスの「サイン・オヴ・ザ・タイムズ」での彼女の雄姿がダブった。

続いて切れ目なく演奏されたのがこれまたびっくり、今度はザ・ファミリーの「Mutiny」! さらには、プリンス・ファミリー時代のシーラを代表する1曲「A Love Bizerre」。客席はダンス・フロアと化している。今さらながらに気付かされるのは、プリンスの息のかかった曲というのは、たとえ本人不在でも"彼絡み"だと判る、ということだ。J.B.やジョージ・クリントン(P-ファンク)同様に、プリンス独特のアレンジや音色、つまり絶対的な個性があるのだろう。シーラのような直接交流のあった面々はもちろん、ディアンジェロやアウトキャストといった後輩がやっても、すぐに判るのだ。

ところで「A Love Bizerre」の中には様々なフレーズが投げこまれていた。プリンス、P-ファンク(ファンカデリック)、スライ&ザ・ファミリー・ストーンらの有名な決め文句、カルロス・サンターナを彷彿とさせるギター・ソロ(このパートではキャットのヴォーカルもフィーチャー。よく通る、インパクトの強い歌声だった)。そしてプリンスのJ.B.風決め技「ストロベリー」(これは嬉しかったなあ!)等々。シーラはシスコのラテンやファンクを中心とした文化圏で育った、それをこの一曲の中で教えられたような気がした。そしてレイモンド・マッキンリーのベース・ソロは聴き応えたっぷり。途中、左手だけでベースを奏でながら右手両足でドラムも演奏するという"荒技"も披露し、客席を沸かせた。

ここでひと息。ステージにはシーラと、シンガーでシーラのビジネス・パートナーであるリン・メイブリー(P-ファンク・ファミリー、ブライズ・オヴ・ファンケンスタインの元メンバー!!)だけが残り、彼女達が立ち上げた、虐待されている子供への基金「The Lil' Angel Bunnies Foundation」への参加の呼び掛けが行われた。シーラは社会的な活動への関心が高く、チャリティ・コンサートなどにも積極的に参加している。通訳を使うことにより、自分の言葉が確実に日本のオーディエンスにも伝わるようにという配慮もなされていた。この基金のベネフィット・コンサートが昨年末行われており、ザ・リヴォリューション、シーラ・E.バンド、ザ・タイム、ザ・ファミリーらプリンス・ファミリーが再集結している。その時のプログラムを入手したが、その顔ぶれの豪華さは悔しいほど(実はその日、筆者も同じ州に居たのだ!)。中でも、発起人であるシーラは大活躍で、マッドハウスのメンバーとして出演している。先の2曲が今回演奏された理由が解った気がした。

このスピーチ中に、ドラムズの前方にパーカッションがセッティングされた。以降のシーラの立ち位置はここだ。まずリンの歌う「All in My Head」。深く心をうつヴォーカルだ。続いてシーラのパーカッション(エレクトリック・パッド)とフィリップ・デイヴィスのシンセサイザーによるインストゥルメンタル曲がスピリチュアルな空間を演出した。

さてそんな静かな時がひと段落し、次なる曲へと向かうその時、一人の日本人男性が舞台へ上がってきた。それもドラム・セットへ! その男性、わが国を代表するグルーヴ・ドラマー、沼澤"タカ"尚が、そのキャリアを西海岸からスタートさせていた事を御存知の方は多いだろう。そのひとつがシーラのバンドだったそうだ。以来、彼女やその周辺メンバーとの親交は深く、現在も、今回のメンバーエディ・M.、レイモンド・マッキンリー とNothing But The Funkとしても活動している。そんな彼を加えて(飛び入り状態だったそうだ)、いよいよ彼女最大のヒット曲「The Glamorous Life」がスタートした。シンプルなビートを叩き出すだけでこんなに「らしさ」の出せる人も珍しい。バンドのグルーヴが、客席の熱気が、明らかにワンステップ上がった。

タカを加えたバンドは(彼のドラム・ソロを挟んで!)次の曲へなだれ込んだ。何と何と!プリンス&ザ・リヴォリューションの「America」ではないか! ここでシーラと同郷の旧友で現在は日本を活動の拠点としているシンガーのブレンダ・ヴォーンも参加し、ステージはさらに盛り上がる。個人的にプリンスの最も好きな中の一曲でもあるので狂喜した。ちなみにこれはこの回だけの演奏だったそうだ。

夢のようなメドレーが終わり、ここで本編が終了。拍手に呼ばれてのアンコール曲は、神へ捧げるというコメントに続いての「River God」。唯一、ハンドマイクを手に歌に専念した曲だった。シーラのこの「うた」への特別な想いを垣間見た気がした。

「The Glamorous Life」のプロモーション・ビデオで、パーカッションをカッコ良くひっぱたきながら(この表現がぴったりだと思った)挑発的なカメラ目線で歌うシーラに心を奪われてから今年で20年。今なお変わらぬ演奏、歌を披露する、そして歳を重ねて、ますます魅力的になった彼女には全く脱帽してしまう。ちなみに当時話題をさらった「シンバル蹴り」の代わりに「かかとでティンバレスの表面を押さえて音を高くする(通常は肘で行う)」という少しコミカルな、ウケ狙いっぽいワザを披露してくれました(笑)。

会場の duo Music Exchange に足を運ぶのは失礼ながら今回が初めてだった。筆者のようなポップ・ミュージック・ファン歴2〜30年といった音楽貧乏人(トホホ)がライヴ会場に望んでいるであろう"ちょうどいいカジュアル感覚"に好感を持った。今後の顔触れにも期待したい。


Musicians:
シーラ・E Sheila E. (Drums, percussion, vocal)
レイモンド・マッキンリー Raymond McKinley (Bass)
キャスリーン・"キャット"・ダイソン Kathleen "Kat" Dyson (Guitar)
フィル・デイビス Phil Davis (Keyboard)
エディ・M Eddie M. (Sax, vocal)
リン・メイブリー Lynn Mabry (Vocal, percussion)

Special Guest: 沼澤尚Takashi Numazawa (Drums)


Set List (2nd show)  *カッコ内は発表年他
1. Six (86 /Madhouse)
2. Whatcha Gonna Do (91)
3. Closer (01 /Sheila E. & The E. Train)
4. Mutiny (85 /The Family)
5. A Love Bizerre (85)
- includes When Doves Cry, Thank You, One Nation Under a Groove etc.

MC) Talked about "The Lil' Angel Bunnies Foundation"

6. All in My Head
7. Interlude by Sheila & Phil
8. The Glamorous Life* (84) 〜 Drum solo* 〜 America* (85 /Prince and the Revolution)

Enc)
River God (01)

*) Takashi Numazawa on drums

レポート:Yoshiyuki Hitomi
写真撮影:
duo Music Exchange
取材サポート、編集、デザイン:Asako Matsuzaka
取材協力:duo Music Exchange


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