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LIVE REPORT

JING CHI
26th May, 2004 at Motion Blue yokohama


精気横溢爆裂的興奮:ヘヴィ・バンド「ジン・チー」が横浜赤レンガ倉庫を揺るがす興奮の一夜





4月22日にブルーノートでマイケル・ランドウとデイヴィッド・ゴールドブラットをゲストに重量級のバトルを繰り広げた「ジン・チー」。今回のライブではゲストとしてデイヴィッド・ゴールドブラットのみを加えた4人編成でより個性的なステージを展開してくれた。会場は東急東横線直通の「みなとみらい線」の開通でアクセスも格段に向上し、人気スポットとして注目を集める横浜赤レンガ倉庫2号館の3階にある「モーション・ブルー・ヨコハマ」である(日本大通り駅または馬車道駅下車5分)。ボックスシートも多くしつらえ、ゆったりとした客席と本格的な料理やドリンクが楽しめるライブスポットである。

今日のライブは7時からのファーストセット。会場が暗くなりステージに現れた4人が軽く音出しをしてステージモニターをチェック。ヴィニー・カリウタのカウントでのっけからヘヴィー・グルーヴが炸裂する。ライヴ・アルバム「Live at Yoshi's」の一曲目に収録されている「That Road」である。ロベン・フォードのレスポールがヘヴィーなコードでドライヴし、ジミー・ハスリップの重量級ベースが会場を揺るがし、ヴィニー・カリウタの安定感あるドラミングが会場のオーディエンスを直撃する。そしてデイヴィッド・ゴールドブラットのエレクトリック・ピアノがダークな演奏に華を添える。「ジン・チー(精気)=生命力」というバンド名をまさに体で現す演奏だ。ロベン・フォードの艶のあるブルージーなギターが冴える。

テレキャスターに持ち替えたフォードがギターの持ち味を生かしたクリスプな音でリードする「Stan Key」が続く。ワウをかけた乾いたトーンは彼の得意とするところである。カリウタのステディなドラミングがハスリップのベースと相まって地を這うような重いグルーヴをたたき出す。ブルーノートではヤマハのサブキックを使っていたが、今回はグレッチのバス・ドラムのみでそれに勝るとも劣らない迫力を出している。フォードがワウ・ギターでバッキングする中をゴールドブラットが効果音を織り交ぜながらエレクトリック・ピアノをスペイシーに奏でている。クールな中に熱いコアを感じさせる演奏である。曲は次第に激しさを増し、嵐のようなリズム展開となって頂点に達したかに思えるところで突き放すようにエンディングへ。

ハスリップによるメンバー紹介のあと、6月に発売予定のニューアルバム「JING CHI 3D」からカリウタの曲「Treasure」が演奏される。フォードはレスポールに持ち替えている。リズムチェンジを巧みに配し、メンバーそれぞれがシンコペートするポリリズミックな展開がカリウタのリズムに対するこだわりを感じさせる。フォードのソロは低音部を主体に骨太な印象で始まるが、次第に白熱したハードな展開となる。そしてゴールドブラットのオルガン・ソロが曲に小洒落た雰囲気を与えるように始まるのだが、次第にブルージーさを増してゆき、それに合わせてバンドもファンキーな色合いで盛り上げてゆく。ところでこの新譜にはゲストとして、名前は明かせないが著名な天才ブルース・ギタリストが参加しているとのこと。発売が楽しみである。

次も新曲で"Move On"。シンセサイザーのコズミックなサウンド・コラージュが直前までの熱を冷ますのに一役買っている。カリウタのカウントでステディな4ビートと共に、テレキャスターに持ち替えたフォードが親しみやすいメロディーを奏でる。ヴォーカル曲としてもいけそうな感じである。

ここでカバーが演奏される。「Live at Yoshi's」にも収められていた、ボブ・ディランの97年のアルバム「Time Out of Mind」からの曲、「Cold Irons Bound」である。原曲のサザンロック風な色合いはこのバンド特有のへヴィー・グルーヴによってクリームやレッド・ツェッペリンを思わせるブリティッシュ・ロック風の印象へと変わっている。カリウタが4ビートながら激しいリズムを叩き出し、少し多めにファズをかけたテレキャスターのチャンキーなカッティングに乗せてフォードがヴォーカルを取る。このテレキャスターの音は極上だ。続くフォードのソロはエネルギーほとばしる豪快なもので実に気持ち良い。シンセサイザー・ソロが続き、カラーを添える。圧倒的な演奏である。

次は「Crazy House」で、刻むドラムスとベース、クリーンなテレキャスターの音がアップテンポに響く。ヘヴィーな出だしからフリーフォーム名中間部へと移ると、カリウタがリムショットでパーカッシヴにリズムをとる上をゴールドブラットのスペイシーなサウンド・コラージュが会場を包み込んで行く。ドラムス、ベース、ギターが細かいリフを繰り返してゆき、催眠的な音世界を作り出す。ファズを加えたテレキャスターでフォードが自在なフレージングの冴えを見せる。バンドはポリリズミックな展開を見せながら緊張感を高めて行く。そこからさらにカリウタのドラムスが激しさを増してゆく様は最高にスリリングである。

フォードはレスポールに持ち替え、新曲がもう一曲披露される。フォードの作になる彼らしいアーバン・ブルースの「Blues Alley」だ。フリーフォームで翳りのある曲調の中にさまざまな要素がちりばめられた曲展開である。前半ではカリウタはブラシを使い、ゴールドブラットのオルガン・ソロもつぶやくように弾いている。そしてフォードのワウを使ったレスポールでのソロが聴き物である。また、リズムチェンジを繰り返すカリウタのドラミングにも注目すべきであろう。ハスリップが音に酔うように低い通奏音を響かせている中、次第に熱を帯びて猛り狂うように弾きまくるフォードがブルース・ギタリストの真骨頂を見せる。

ラストはブルーノートではオープニング・ナンバーだった「The Hong Kong Incident」ある。やはりパワー全開のへヴィー・チューンで、弾きまくるフォードに会場から惜しみない拍手が贈られる。それにしてもハスリップのドライヴ感は抜群だ。ゴールドブラットはアコースティック・ピアノ・ソロを聴かせるが、これまで以上に自在なフレーズを弾き連ねてゆき、ここで本領発揮といった様子の好演である。終盤に聴かれるカリウタの嵐のようなドラミングが圧巻であった。

アンコールに応えてバンドがステージに戻り、ドラムスのサウンドチェックをした後、ハスリップのベースのリフに乗せてブルージーなフォードのレスポールが歌い出す。曲は「Blues MD」である。リラックスしたムードのジャムだが、タイトに決まっている。そしてここへ来てようやく飛び出すフォードの高速ソロに会場は大いに沸き返る。ゴールドブラットはスティール・ドラムとギターを合わせたようなシンセサイザー・トーンでソロをとり、フォードとハスリップがリズムを変化させながら曲に表情を加えてゆく。メンバー各自が会話を楽しむような卓越した演奏であった。

今回はギター一本でフォードの自在なプレイを存分に楽しむライブとなった。新曲を多く取り入れ、前回のレポートとはまた違うセットであったが、今回の白眉はディランのカバー、「Cold Irons Bound」ではなかったか。60年代末のブルース・ロックがアート・ロックに変わろうとするころの熱い雰囲気をよみがえらせてくれた素晴らしい演奏であった。

Members:
ジミー・ハスリップ(Bass)
ロベン・フォード(Guitars, Vocal)
ヴィニー・カリウタ(Drums)
デビッド・ゴールドブラット(Keyboards)

Set List:
1. That Road
2. Stan Key
3. Treasure
4. Move On
5. Cold Irons Bound
6. Crazy House
7. Blues Alley
8. The Hong Kong Incident

Encore) Blues MD

注:
メンバーの名前のカタカナ表記は、本人の発音に従えばそれぞれ「ジミー・ハズリップ」「ヴィニー・カリユタ」ですが、日本での通例に従い「ジミー・ハスリップ」「ヴィニー・カリウタ」としました。ご了承ください。

レポート:Tatsuro Ueda
撮影:Uga
取材協力:
Motion Blue yokohama

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