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LIVE REPORT

Hakon Storm Mathisen with Takehito Kobayashi Group
Nov 17, 2003, at Welcome Back, Otsuka, Tokyo


ノルウェーの実力派ギタリスト・作編曲家と日本のベテラン・ジャズメンが織り成す、いぶし銀の音世界





ホーコン・ストーム インタビュー

ホーコン・ストーム・マティセンはノルウェーにおいて最も優れたギタリストとして、またビッグバンドのための作曲家としても別格の評価を受けている人である。ノルウェー王国大使館の広報資料をみると、彼の多才なプロフィールがうかがえる。

「ノルウェーを代表するジャズギタリスト。1985年、最優秀ヤング・ジャズ・オーケストラ賞を受賞。1991年、コペンハーゲン、リズミック音楽院を卒業。編曲と音楽理論を学ぶ。ソロギタリストとして、ロックからフリースタイルジャズまで幅広い演奏スタイルと複雑なリズムで構成された音楽が多くのジャズファンを魅了しており、自身のバンドあるいはサイドマンとしてヨーロッパ各地、アメリカ、アフリカで公演を行っている。またビッグバンドの作曲、指揮活動にも力をいれているほか、ノルウェー国立音楽学院で教鞭もとっている。」



今回の来日では富山、大阪、東京など8箇所でそれぞれの会場ごとに違った邦人ミュージシャンとのセッションを行ってきた。今日のライブはその最終日であるが、今日の共演の小林武仁は1972年以来、米国・カナダ・ヨーロッパで活躍するベテランであり、また毎月第一木曜日にウェルカムバックで行われる"Jazz Jam Session"では「小林武仁グループ」を率いてセッション全体を仕切る斯界の重鎮である。2004年には、オリジナル曲による2枚のアルバムリリースが予定されている。

スローな4ビートで始まったセットの一曲目はホーコンの作曲による「Lighthouse Blues」。ステディなベースにリードされてホーコンの弾くエピフォン・エンペラー・リージェントがブルージーなメロディーを弾き連ねてゆく。トランペットのソロにベースが絡み付いてグルーヴ感を出してゆき、端正なピアノとドラムスがバックを固める。ピアノソロでは訥々とした出だしから徐々に音域を広げてゆく様が小気味よい。ベースソロはメロディーを主体に高域から低域までを広く使った秀逸なものである。この曲の由来は、オスローにある"Fyret"(フュレット、灯台の意)というジャズ演奏の聴けるレストランに因んだもので、通常はやはり今回のNorwegian Jazz Nightsのために来日しているヤコブ・ヤングとのギター・デュオで演奏されるものだそうである。

 





一転して華やかなムードで演奏されるジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson)の「レコルダメ(Recordame)」。トランペットがリードし、ホーコンのギターが味わい深いハーモニーでバッキングを展開する。きらびやかな表情を見せるトランペットに続き、低音部から駆け上がるように入ってくるホーコンはスウィープ奏法的な滑らかなコード弾きなど早いパッセージを交え、多彩な腕前を見せる。軽やかなピアノソロは一曲目とは変わって音数の多い熱のこもったもの。各メンバーのソロの後アンサンブルに戻るとギターとトランペットのユニゾンでクールに決めてくれた。


3曲目は名バイブ・プレイヤーのボビー・ハッチャーソンの曲で「Little B's Poem」。フリューゲルホルンに持ち替えた高瀬龍一が柔らかな音色でバラードをかなでる。元岡一英は控えめにポール・ブレイ(Paul Bley)を思わせる印象的なフリーフォームさを漂わせるピアノを聞かせる。ホーコンも淡々とした中に高揚感のあるソロを聴かせてくれた。後半、徐々に熱を帯びるピアノソロにベースがメロディアスに絡み、ソロをつないでゆくところは今回の聴きどころのひとつであった。


アップテンポなスウィング感を持った「Storm Bird」はホーコンの曲で、ウェス・モンゴメリー(Wes Montgomery)を思わせるような安定した速いパッセージを続けてゆくあたりが聴きどころ。ピアノソロはリズムとメロディーのバランスを上手くとった軽快な音で楽しませる。鈴木直勝のドラムスがライドを中心に後押ししてくるように聞こえるところが面白い。ドラムスのフィルをフィーチャーしながらギターが小技を見せる掛け合いはジャズの楽しさの典型と言ってもよいだろう。


最後の曲は小林武仁の曲で「Song for Japanese American Princess」。2/4でゆったりと弾く和旋律のピアノに3/8で刻んでくるベースが日本とアメリカを象徴する。静かさの中にも興奮を予想させるオープニングであり、緻密なリズム構成とグルーヴ感が同居する佳曲である。細かいフレーズを折り重ねるように弾くホーコンのギターがバンドとよく絡み合って曲全体を高みへ押し上げてゆく。ドラムスもこれまでとは変わって前へ出てくる。トランペットはファンキーな味も交えながら切り込んでくる。パーカッシヴなピアノソロに被せてホーコンがボリューム奏法でベースのボウイングのような音を出すなど、ややアヴァンギャルドな雰囲気も見せてくれた。途中でフリーフォームになり、そしてベースのキープするリズムに戻してくるところなどは心憎い演出である。トランペットとギターのユニゾンでテーマを奏で、そして和的ムードへと戻ってエンディングとなるが、実によく構成された演奏であった。


なお、今回のツアーコーディネーションはワールド・プロジェクト・ジャパンの黒坂洋介氏によるものだが、氏の主宰する「KIKI JAZZ」(http://www.jjazz.net/kiki/)はスタンダードナンバーを様々な演奏によって聞き比べるというコンセプトで愉しませてくれる。

Members:
ホーコン・ストーム・マティセン:ギター
小林武仁:ベース
元岡一英:ピアノ
高瀬龍一:トランペット、フリューゲルホルン
鈴木直勝:ドラムス


SET LIST:
1. Lighthouse Blues
2. レコルダメ(Recordame)
3. Little B's Poem
4. Storm Bird
5. Song for Japanese American Princess


Report by Tatsuro Ueda
Interview by Tatsuro Ueda
Photography by Yoko Ueda
Design by Asako Matsuzaka
Special Thanks to COSMO PR, Welcome Back, Otsuka
(http://www.welcomeback.jp/)


Interview With Hakon Storm


Q:いくつか伺いたいことがあるのですが、まずはお定まりの質問からです。日本においでになっていかがですか?

ホーコン: 日本は大好きです!今回が初めてなのですが、何もかも気に入っています。 ここへ来るまでは、魚とご飯の朝食など、いささか不安な部分もありましたが実際のところ食事も大変美味しくいただいています。もちろんこのツアーの前までは日本についてほとんど知りませんでしたが、毎日演奏し、旅行する中で日本についての正しい認識が出来てきたと思っています。

Q: いろいろ見て回ったり、魚とご飯の朝食をとる機会はありましたか?

ホーコン: はい、1日休暇を取って京都へ行ってきました。お寺や神社、城郭などを見てきました。それから昨日は鼓童のコンサートを見てきました。鼓童は日本でぜひ見たいと思っていて、佐渡島まで行こうかとも考えていたものですから、東京で見られて本当に幸運でした。


Q: 今回はいろいろな日本人ミュージシャンと共演されましたが、ノルウェーで一緒に演奏されているミュージシャンとの違いは感じますか?

ホーコン: いろいろな意味で違うと思います。また、毎晩違った人と演奏しますし。今夜は日本での8回の演奏の最後でした。今日一緒に演奏した人達は昨日の人達とは全く違う感じでした。ノルウェーで演奏するときは長くやっている自分のバンドですし、どんな演奏をするのか演奏を始める時点から自分で決めています。でもここではそういうわけにはいきませんので、よりオープンな感覚でいると言ってもよいかもしれません。毎晩同じ事をする訳には行きませんし、他のミュージシャンの音をよく聴いて何がフィットするのか見つけなくてはならないわけです。そう言う意味においてとても興味深い感じです。

Q: 今日のバンドについてはどうでしたか?

ホーコン: とても楽しいバンドでした。ファーストセットよりもセカンドセットのほうが気持ちが合ってきたので、リラックスして出来が良かったと思います。もっと一緒に演奏できる時間があったら良かったのですが。ドラムスの人は右手のテクニックに特長があります。小林さんのベースには高い方の二本の弦にガット弦が張ってあって、好きな音です。ピアニストも素晴らしい。そしてトランペットプレイヤーがまた最高ですね。すごく上手い人ですね。


Q: ノルウェーのミュージシャンとも多くの人と演奏していますね。ヤコブ・ヤングともやっておられる。

ホーコン: そうです、ヤコブとはデュオでやっていて小さなカフェのようなところで定期的に演奏しています。彼と演奏するのは気持ち良いものです。


Q: ボディル・ニスカのBare Jazzという店では演奏するのですか?

ホーコン: あ、あそこでは二回演奏しました。随分前のことですが。あそこは小さな店で地下も入れると三階建てなんです。月に一回くらい、不定期にライブをやっていますね。大体はニューアルバムの発売記念ライブで、30人か40人入ればそれで一杯になってしまうくらいの大きさです。


Q: ビーディ・ベルのベアテ・レックとも一緒に活動されたとか?

ホーコン: そうです、彼女が私のバンドで歌ったんです。私のバンドは5人編成で、ボーカル曲もあるものですから彼女が歌ってくれるわけです。彼女は本当に素晴らしいボーカリストで、他には見られないような極めて高い歌唱技術を持っています。彼女に7拍子とか9拍子、5拍子など変拍子でしかもスケールが常に変化して行くような楽譜を渡すと、他のミュージシャンが頭をひねっている間にその場で歌ってしまうんですよ。非常に良く勉強しているミュージシャンで、しかも美しい声に恵まれて、また素晴らしいフレージングができる人です。

Q: あなたはギタリストなわけですが、ビッグバンドの曲を作曲されますね。どうやって作曲するのですか?

ホーコン: いろいろな方法をとります。今日演奏した曲はスタンダードなスタイルのものです。もっと現代的に、和声的かつ現代風な、カウントベイシー以降のようなビッグバンド曲も作ります。そしてもっと現代風な曲も作りますが、そうした曲では実験的な作風を試してみることになります。いつも新しい手法を模索していますね。もちろんビッグバンド曲を書くのはそれが好きだからです。ビッグバンド曲については音楽院で、またその後にも自身で本や楽譜で、そして尊敬する作曲家の音楽を聴くことでかなり深く研究しました。なかなかおいそれと出来るものではありません。

Q: 作曲するときにはギターやピアノで作曲するのですか?それとも紙面に直接かきこんで行くのですか?

ホーコン: 作曲する音楽にもよりますが、ビッグバンドの場合は直接楽譜に書いて行くのがほとんどです。いろいろな影響を受けながら、長年にわたって集めてきたコンセプトを具体化するわけです。そういうものはどこからともなく浮かんでくるというものではありません。少しのインスピレーションを頼りに手作業でこつこつと進めて行くのが大抵のやりかたです。


Q: 好きな作曲家、ミュージシャンは?

ホーコン: 最近は西洋諸国の現代作家の曲を聴いていますね、オリヴィエ・メシアン、べラ・バルトーク、イゴール・ストラヴィンスキーなどです。ジャズではマリア・シュナイダーが好きです。彼女はとても良いですね。それからギル・エヴァンスも好きです。

Q: ギタリストではどうですか?

ホーコン: ジャズ・ギタリストでは昔からジョン・マクラフリンの大ファンです。いちばん好きなプレイヤーですね。彼の創造性、コントロール力、バランス感覚というのは完璧といえます。それからもちろんウェス・モンゴメリーも好きです。


Q: ノルウェーについての質問に戻りますが、ヤコブ・ヤングのほかにはどんな人と演奏しているのですか?

ホーコン: 自分のトリオがあって、ベースがFinn Guttormsen、ドラムスがJarle Vespestadです。Farmers Marketというバンドで来日したことがあります。

Q: "Storm Bird"という曲がありましたが、タイトルの由来は?

ホーコン: そうですね、チャーリー・パーカーが"Yardbird Suite"を、また偉大なピアニストで尊敬する作曲家であるレニー・トリスターノが"Lenny Bird"という曲を書きましたから、それに倣って"Storm Bird"という曲を書いたというわけです。

Q:素晴らしい演奏のためには常に練習を怠らないのでは、と思うのですがいかがですか?

ホーコン: 一時期は毎日何時間も練習することもありました。今は重要なステージがあるとか、レコーディングの前、あるいは特別に新しい手法を研究するときなどに限って集中的にするようにしています。ときには作曲するだけで長い間全く弾かないこともあります。また教室で教えるときには生徒のことに集中していますから自分にとって新しいことを身につける暇はありませんね。

Q: あなたのギターについてですが、それはエピフォンですね?

ホーコン: そうです、エピフォンで、これは旅行用のギターなんです。1953年のギブソンES175も持っていますが、これは持ち歩きたくないですね。飛行機の荷物の扱いを考えると恐ろしいし、かといってギターのために飛行機の座席をとるというのも高くつきますし。このエピフォンは1994年の現代版ですが、凄く良い音がしますよ。多分、払った値段の10倍の価値はあると思います。でもやはり古いギブソンの持つ音の芯、というものは特別なもので、こればかりはギブソンでしか出せませんけれど。

Q: どうもありがとうございました。無事に帰国されることをお祈りします。

ホーコン: ありがとう!



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