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LIVE REPORT


コジカナツル
14 November 2003 at Blues Alley Japan



名実ともにトップクラスのミュージシャンたちによる、自由でおおらか、活気に満ちた楽しいステージ!










コジカナツル ミニインタビュー(本番前にメンバーの皆さんから軽くお話をうかがいました)


「コジカナツルのライブは楽しい。とてもハッピーな気分になって、元気がでてくる」これがライブ後、まず一番の感想だ。なんといっても小島良喜、金澤英明、鶴谷智生の3人のユニットである。「これはきっと凄いだろうな」と思い、手にとったファーストアルバム「コジカナツル」も期待通り。ライブ録音のようなスリリングで臨場感あふれる演奏と幅広い音楽性、そしてスタンダードナンバーに対するアプローチの面白さなど、その素晴らしさを十分に堪能させてくれたのだが、ライブでの「コジカナツル」はもっと感動的だった。

ファーストセット、まずブルースフィーリングたっぷりの「Blues Everywhere」で軽くほぐしたあと、"コジカナツルらしい曲"といわれる「"F"」(作曲:小島良喜)へと進んだ。
彼らはそのライブごとに楽曲へのアプローチ、アレンジメントが変わり、決して同じように演奏することが無いといわれ、そこがまたこのバンドの魅力のひとつとなっているが、この日の「"F"」は美しいピアノのイントロダクションから始まった。小島の奏でる美しい旋律がビートの効いたピアノバッキングへと変わり、その上に鶴谷がタイトで強靭なストロークを重ねていく。曲が進むにつれ、各自の自由度が増していき、3人が思い思いにリズムを刻みフレーズを奏でる。それが見事に1つのアンサンブルとなっていく様は実に痛快であり、リズムの決めどころは心憎いばかり。小島のアグレッシヴなソロワーク、鶴谷の端正さとダイナミックさを併せもったドラミング。「"F"」はスピード感にあふれ、スリリング、パワフルに展開した。

熱気あふれる「"F"」の後は、渋いブルースチューン「Alternative Blue」。抑揚の効いた大人の雰囲気の曲。シンプルなビートのうえで金澤のベースが自在にうねる。やはり圧倒的な存在感である。柔らかなタッチからは深くて強靭、時にやさしく繊細なメロディーラインが生み出された。そして小島のソウルフルなピアノソロも聴き応え十分。まさに本能のおもむくまま、体全体での表現がオーディエンスにストレートに伝わってきた。

続く「'S Wonderful」は、明るく弾むような4ビートのナンバー。金澤は弾むようなベースラインで全体のグルーヴ感をより引き出していくのだが、ビートを刻みながらも余裕たっぷりにメロディーを奏でていくあたり、さすがと思わせるテクニックと深い音楽性を感じる。小島はきらびやかなソロを披露。とてもゴージャスな4ビートだった。

ファーストセット締めくくりは、コジカナツル風にアレンジされた16ビートの「So Nice」。鶴谷が繰り出す多彩なストロークとシンバルヴァリエーション、ウィットの効いたピアノによるメロディーライン、さらには縦横無尽のベースフィンガリングと、まさに"中味のぎっしりつまった"華やかなアレンジで楽しませてくれた。

インターバルを挟んでセカンドセットが始まる。最初のナンバーは「In A Mellow Tone」。ゆったりとした4ビートにのって金澤のベースがたっぷりと響く。この曲はこの持続性のあるベースラインがサウンドの要となっていった。途中、鶴谷がドラムロールでpppからfffまで盛り上げていくところは圧巻。繊細さ、緻密さとダイナミクスレンジの広さを堪能することができて、聴き応え十分だった。


「Yossy's Delight」(作曲:金澤英明)は本当に感動的なバラードだ。ほどよく押さえの効いたブラシと流れるようなベースにピアノの旋律が優美に溶け込んでいく。言葉で言いあらわせない"極上の優美さ"がある。独創的なパッセージの散りばめられたピアノソロは絶品だった。

続く、「Whoop it up!」(作曲:小島良喜)では鶴谷のドラミングが炸裂。ピアノとベースのフリーインプロヴィゼーションで始まったこの曲は、アップビートにのってスリリングに展開した。鶴谷のドラミングは曲が進むにつれて激しさを増し、まるで嵐のよう。ドラムソロでは一瞬の間の妙を感じさせるタイム感と幅のひろいダイナミクスレンジ、すべてを圧倒する凄まじさでオーディエンスを飲み込んだ。3人のパワー、感性、テクニックが存分に発揮された一曲だった。

嵐のあとは少しゆったりとしたチューン「Here, There & Everywhere」。優しいメロディーをピアノとベースが奏で上げていく。さりげないフレーズの中にもセンスの良さが光り、静かな感動を呼んだ。

そろそろライブも佳境になったところで「Dog」(作曲:小島良喜)がスタート。これはライブ後、「この日一番!」とファンからの声があがった曲。手拍子の中、弾むビートにのって展開するワクワクするような楽しい曲である。そして、テンポにのって流れるように弾ききった小島のピアノワークは本当に見事で、天性の輝きを感じさせた。


この日はラストもブルースチューン「Teach Me Tonight」で締めくくった。ゆったりとしたグルーヴにのって大きな広がりを見せた一曲だった。熱烈な拍手に応えてのアンコールはビートを効かせた「Love」。リズムアクセント、音の強弱を巧みにとり混ぜて、随所に遊びも交えながら聴かせる。明るく、生き生きとした雰囲気でステージは幕を閉じた。


とにかく活気に満ちて、楽しいステージだった。そしてこれだけの力量をもったプレイヤーたちでありながら、決してテクニックが前に出て聴こえてくることがない。ここでオーディエンスが耳にし、体で感じるのは、渾身のプレイをするメンバーたちのハートであり、おそらくは彼らが表現したいと思う"音楽そのもの"である。そして音楽に対する真摯な姿とおおらかな人柄をも音楽を通して感じることができる。あらためて音楽の楽しさ、素晴らしさを実感した演奏であった。


<Members & 使用機材>

小島 良喜(Piano)
Steinway & Sons, New York 1980年代

金澤 英明(Bass)
ウッドベース(1900年初頭 ドイツ製、作者不明)、ピックアップ(シャトラー スイス製)、クリップマイクロフォン(Audix 20i)、アンプ(SWR)

鶴谷 智生 Drums /
Official Site: http://www.teecrane.net/
"Pearl" Maple 6ply
TOM: 12", 13"、FL. TOM: 16"、BD: 22"、SN: "Steve Ferrone Model" Brass 14"× 6 1/2"

Cymbals "Sabian"
HH: 14" AA Light Hi-Hats
RIDE: 20" AA Medium Ride, 18" Old Crash Ride, 17" HH × Evolution Crash, 16" HH Thin Crash


< Set List >

First Stage)
1. Blues Everywhere (Shirley Scott)
2. "F" (Yoshinobu Kojima)
3. Alternative Blue (Shinji Shiotsugu)
4. 'S wonderfull (George Gershwin)
5. So Nice (Marcos Valle / P.S.Valle)

Second Stage)
1. In A Mellow Tone (Duke Ellington)
2. Yossy's Delight (Hideaki
Kanazawa)
3. Whoop it up! (Yoshinobu Kojima)
4. Here, There & Everywhere (John Lennon / Paul McCartney)
5. Dog (Yoshinobu Kojima)
6. Teach Me Tonight (Gene de Paul)

Enc)
Love

Report: Asako Matsuzaka
Support: Akiko Kamo
Photography: Chikako Ozawa(Stage Photos)
Design: Asako Matsuzaka
Many Thanks to Keiko Iwasaki, Blues Alley Japan


コジカナツル ミニインタビュー

※メンバーの皆さんから本番前に軽くお話を伺いました。


Q:ファーストアルバムについての感想を聞かせていただけますか?


鶴谷:もう、忘れちゃいましたねえ。半年以上も前のことなので・・・(笑)。

小島:ずいぶん前のことなので・・・。

鶴谷:出たのは8月なんだけど、録ったのは4月なんです。

小島:4月1日・・・エイプリルフール・・・。

鶴谷:それから毎月のようにあちこちでライブをしているので、もうレコーディングの時の記憶があまりないというか・・・(笑)。


小島:ないねえ(笑)。

鶴谷:改めて聴いてみて、「あ、こんなことやっていたんだ」という感じで、少し客観的に聴いてしまいますね。

Q:アルバム自体の出来については、満足していらっしゃいますか?

小島:満足しています。その時点では。ただ、あれは4月時点での記録として残したという感じで、それからずいぶん変わっていますけど。


Q:今日のライブではアルバムの曲を中心に演奏されるのですか?

小島:やりますが、中心という感じでもないです。

金澤:レコーディングでは、それまで積み重ねてきたレパートリーの中から、その時点で「これだ」と思うものをやったわけで、それ以降やり始めた曲もあるし・・・・レコーディングした曲ももちろん入っているけど、僕らにとってあのレコーディングは、それまでの状態から今までの状態の中に、あのレコーディングがあっただけで・・・。

小島:このバンド自体は3年くらい前からあったんですが、やっているうちに3人が一番いいかなあ、という感じになってきたんです。3人になってから1年半ぐらいかなあ。

金澤:だから、あまりバンドとして旗揚げしたという記憶はなくて、やっているうちに自然発生的にバンドになったという感じです。

Q:それでは、バンドのコンセプトというのも?

小島:なんもない無い(笑)。やりたい放題(笑)。

金澤:ある意味では、セッションの究極の到達点みたいなところはあるね。

鶴谷:そのとおり!

小島:だから名前についても、「なにか考えれば?」といわれたこともあったんですが、そのまんまになりました(笑)。

Q:皆さん、いろいろなところでご活躍されていますが、皆さんにとってコジカナツルとは、どういった存在ですか?

小島:「3人集まったらこういう音になりました」、ということです。やっぱり僕が一番自由に出来るのが、この2人なんです。

金澤:このバンドが一番、自分がやりたいと思うことを、ぶつけられるパーセンテージが一番多いというのを、僕は実感している。2人の腕もそうだし、音楽性もそうだし・・・とてもグレードの高いプレイヤーなんです。それにこのバンドは3人でレールを敷いているバンドでもあるので、3人でセッションする楽しさを考えたとき、このバンドがベストなんです。僕にとって自分の音楽人生の中で一番グレードが高いバンドだと思っています。

鶴谷:どのバンドもそれぞれ違うと思いますし、それぞれのサウンドが出来ているんですが、僕にとってはコジカナツルが一番演奏する機会が多いんです。回を重ねれば、「あ、うん」の呼吸も合ってきますし、自由度も増してきます。トリオってオープンなサウンドが作りやすいから、やっててすごく楽しいです。

Q:コジカナツルを通して表現したいこと、オーディエンスに伝えたいことはありますか?

金澤:特にコジカナツルで、ということではなくて、僕自身は「気持ちよい良い音楽を演奏したい」というのがあるんだよね。演奏するのは楽しいから、「楽しいからやる」ということでずっとやっていければ一番いいじゃない?

小島:あまり深く考えたことがないけど、ただ、「楽しいな」と思ったら、次も来てほしいですね。

鶴谷:回を重ねていろいろな場所でライブをやっていますが、繰り返し来てくれる人も増えてきているみたいです。僕らはありのままで自然体なんですが、聴いてくれる人のほうが、それぞれに楽しみ方を見つけてくれているようです。


ほがらかで笑いの絶えないコジカナツルの皆さんでした。本番前のお忙しい時間に、どうもありがとうございました。



Interview: Asako Matsuzaka
Photography: Noriyoshi Kanda

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