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Artist Press Vol.00 > Close Up > 入江 宏    

入江宏インタビュー:
プロフィール (+ Schedule):

 

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多彩な感性で独自の世界を描き出す個性派ピアニスト入江宏。特にスローチューンにおけるインプロヴィゼイションの美しさはドビューッシーをも彷彿させます。医者としての業務もこなす入江さんにJAZZとの出会い、ピアニズムについて等々、日ごろからの音楽観を語っていただきました。

 

Jazz〜きっかけはラムゼイ・ルイス・トリオ・・・

 

Q:
Jazzに目覚められたのはラムゼイ・ルイス・トリオとうかがいましたが?

入江宏:
中学一年の時、校内放送で流れたラムゼイ・ルイス・トリオを聴いた時、「こんな世界があるんだな」と思いました。体中がもっていかれてしまった感じで、ぞくぞくするというか、とにかくストレートに入ってきました。「これだ」と思って、それから自己流でJAZZ PIANOを始めました。高校まではドラムもピアノも全部一緒にやっていました。 もちろんROCKや他の音楽もやっていましたが、とにかくJAZZの雰囲気を真似ようと思って、本も読まなければ勉強もしたわけではないんですが、なんとか、その雰囲気をだそうと、無茶苦茶、弾きだしたんです。それが始まりです。

Q:
プロ活動を始められたきっかけはなんですか?

入江宏:
高校の頃、入り浸っているジャズ喫茶があって、そこでよく演奏させてもらっていました。パートはほとんどドラムだったけれど・・・。ピアノに関しては、そこのお客さんの中に録音マニアのような人がいて、ソロピアノみたいなものを随分録音してもらいました。 高校3年の時、そのジャズ喫茶に演奏しに来られたジョージ大塚さんが、たまたま店内に流れていた僕のソロピアノ聴いて、僕の演奏にとても興味を持ってくれたんです。僕に「(東京に)遊びに来い」と言ってくれました。その後、東京に出た時、ジョージ大塚さんをたずねました。それがきっかけです。 18〜22、23。浪人一年〜学生時代は月の半分くらい、いろいろなバンドで演奏していました。実際にジョージ大塚バンドに入ったのはその3〜4年後で、約2年間、在籍しました。山口真文さんに出会ったのはその時です。

 

山口真文さん・・・親父の次に尊敬する人です

Q:
山口真文さんとは今もよく共演されていますね?

入江宏:
出会って22〜23年がたちますが、ミュージシャンとしてはもちろん、人間として、人として、親父の次に尊敬する人です。 ミュージシャンとしては、天才という言葉があてはまるかどうかわからないけど、とにかく「飛びぬけて」います。感覚だけの天才肌というのではなくて・・・ちょっとそれだけでは片付かない人です。

山口さんはもの凄い演奏をしながら、しかも回りのミュージシャンをまとめることができる人、ざっと上から眺めて、的確に判断できる人です。僕の場合も、演奏するうえで「ものすごくはみ出てしまってどうしようもない部分」を、ある程度コントロールできたのは山口さんのおかげです。

 

Q:
現在もお医者様として勤務されるかたわら演奏活動をされていますが、お医者さんになられた時は両立することについて迷われませんでしたか?


入江宏:
医者になった当時は、どのような状況になるかわからなかったので音楽活動を一時中断して、しばらくは様子を見ました。ただ実際に医者として勤務してみたら、今くらいのペースであれば「なんとかできる」ということがわかって、それからまた活動を始めました。 もちろん、もっといろいろな人と演奏したい、という気持ちはありますが、時間的な制約もあってなかなか思うようにはいきません。今は「やる価値がある」と思う仕事を選んでいます。

 

音楽の本質は「楔」のような音

Q:
演奏スタイルについてうかがいます。アドリブでもバッキングでも、とても独創的なアプローチをされますね?

入江宏:
言ってしまえば、小学校の終わりのころ、そのままです。「いいな」と思ったことを譜面に書いたり、テキストを読んできちんとしたトレーニングをしていたら、もう少しこぎれいな、型にはまったピアノになっていたかもしれません。実際には「こんな感じだろう」と思って、むちゃくちゃに弾く。型にはまったのはあまり好きじゃないので・・・。

たとえばキースジャレットやハービーハンコックを聴いて、「かっこいいな」と思い、「こんなかんじ?」というイメージがあると、それをそっくり弾かないで、その「イメージ」だけもって自分で勝手に弾く。そればかり繰り返してきました。それで今こうなっているわけです。長年やってきて、多少はそぎ落とされてきましたが。

Q:
では、「ジャズのメソード」についてはどう思われますか?

入江宏:
音楽をワク(ジャンル)、形、に入れて考えることはとてもできません。そういうタイプではないんです。だから、ジャズのメソードはありません。無意識のうちに弾いていることもあるかもしれませんが、少なくとも「意識して」はいません。強制してきれいにしようとは思わないんです。だから、今まで体系づけたことはありません。

「メソード」に基づいた演奏というのは自分には合わないというか、正直なところ「メソード」をこなす、と言うことが「凄いこと」だとは思わないのです。 それよりもマイルスのような、「楔」のような音。楔の入るタイミング。どこかでそれが一回あれば、それだけでいい、と思うんです。それは「理論」でもなんでもない。楔が入るか、入らないか、ただそれだけ。それが本質だと思います。

たとえば、背筋がぞっとするような瞬間は「理論」「理屈」ではありません。「理論をつきくずす」ようなものじゃないと、本当の感動は得られないのではないかと。もし演奏するうえでの「安心」を得るためのスキルであったとすれば・・・

でも、そういった「スキル(メソード)」を持ちながら、しかも「理論をつきくずす」ことができる人がいます。ウェイン・ショーターやマイルスのような特別な人たちです。 もしも「スキル」というものが、演奏するうえで「なんらかの安心」を得るためのものだとしたら、その演奏からは何も感じないでしょう。より高みに行くために「スキル」をもつ、それが本当だと思います。本質とは「安心」とは逆の方向にあると思うのです。

 

ピカっと光る「稲妻」のようなものがあればいいわけです・・・

 

Q:
使用機材についてうかがいます。普段、ローランドをよく使われていますね?

入江宏:
最初からローランドの音色が好きでした。コルグやヤマハより明るくて厚い。ただ最近はだんだん「差」がなくなったけど・・・。D-50なんか、もうあれ以上のものがでてこないし、これからは「ワク」をとりはらって、他のメーカーもいろいろと使ってみようと思っています。 始めの頃はローズスーツケース2段重ねを使っていました。音色が大好きで、今も家には置いてあります。10年くらい前はフェンダーローズの上にローランドのシンセを置くという、そういうセットで演奏していました。

Q:
影響を受けたアーティストは?

入江宏:
ジャズに限らず、グループサウンズ、ロック、いろいろです。レッド・ツェッペリン、サンタナ、S.ワンダー・・・。凄いものは凄い。ピカっと光る「稲妻」のようなものがあればいいわけです。

Q:
演奏することで何を表現したいですか?


入江宏:
具体的なイメージはありませんが、僕の演奏を聴いて何かを感じてくれればいい、と思います。

Q:
あなたにとってジャズとはなんですか?

入江宏:
ひとつの道具、表現、手段です。だから、機会があればジャンルにはこだわりません。存在感のある音をだすアーティストなら誰でもOKです。


Q:
2001年、新しい世紀ですが、これからトライしてみたいと思われることはありますか?

入江宏:
まだ全然具体的ではないんですが、自分のリーダーバンドを持ってみたいと思っています。

Q:
ジャズピアノをマスターしたいと思っているアマチュアにひとことお願いします。

入江宏:
大野俊三さんの話で、ある時、彼はマイルスの曲を何回も繰り返して聴いていたのですが、そのあとで彼が演奏すると、マイルスのフレーズのコピーではなく、その「雰囲気」がでてくるんです。 もしカッコよく弾きたいのなら、あまり形にとらわれて習うのではなく、その雰囲気やイメージを大切にすることです。自分の好きなイメージだけをあびて、あまり形にとらわれすぎないほうが良いと思います。

 

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とても肩の力の抜けた誠実な方でした。 「お医者様との両立で苦労されることは?」と、うかがったところ、「苦労はありません。むしろ苦労されているのは共演アーティストの方々では?」とのお答え。医者とミュージシャン、この2つをとてもバランスよく、しかもごく自然にこなされているお姿がとても印象的でした。(2000.12.11)
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Interbiew: S.Hatano

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