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Artist Press Vol. 12 > Feature: Norway Jazz Week


Beady Belle
: ライブレポート インタビュー
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Bodil Niska
: ライブレポート インタビュー


LIVE REPORT


Beady Belle
May 25, 2003 at La Fabrique, Shibuya, Tokyo



白夜の国の4人が織り成すミステリアスでソウルフル、ジャズからテクノまであらゆる音楽を呑みこんだファッショナブルな一夜




Official Site: http://www.beadybelle.com

ベアテ・レック インタビュー

今回で2回目の来日となる、ベアテ・レック率いる Beady Belle のライブ会場となったのは、渋谷公演通りの中ほどにあるクラブ・レストラン "La Fabrique"。地下へ降りると鏡を効果的に配した、小さい面積ながら2階分の高さのある天井とあわせて意外に開放感を与えるスペースが出現する。

フラメンクシュールという極薄焼きのピザなど、料理も一味違ったメニューで、バーでのワインやカクテルのセレクションも他の店にはないこだわりが感じられる。注ぎっぷりがよいのもありがたい。

今回のライブはノルウェー大使館主催によるもので、テーブルにはパイ生地のスモークサーモン巻きがサービスされた。これまたうれしいおまけつきということになる。


開演時刻近くになると立ち見の観客がグラスを片手にステージエリア両側に大勢集まり、クラブらしい雰囲気が立ちこめてくる。ステージといってもフロアの一部に機材を平置きしたもの。したがってスポットライトなどの照明設備がないため、明かりを落とした店内では演奏者がインテリアライトにうっすらと浮かび上がるという、なにやら秘密めいた様相を呈している。終演後ベアテに「店の中が暗かったでしょう」と訊ねたところ、「ノルウェイはいつも暗いから気にならないのよね」とのこと。

1曲目"Hind Sight":
ヘッドセットを装着したベアテとバンドが登場。ベアテ自ら操作するシーケンサーによるリズムに乗せてグルーヴィーなミクスチャー・ジャズを聴かせる。少しハスキーなボーカルが丸みを帯びて響く。ベアテのヴォーカルは良く知られたところで言うとバーシアに近いところがあるが、ほどよいハスキーさに加えて、ジャジーなフィーリングとこなれたボイス・コントロールを持った安定感のあるもので聴いていて実に気持ちよい。
ピアノ、ベース、ドラムスというバンドの演奏もなかなかに凝ったリズムとメロディーラインを繰り出してくる。

2曲目"One and Only" :
マリユス・レクショーがベースをアップライトに持ち替える。ルンバのリズムを取り入れたミディアムテンポの曲で、ややかげりを帯びた雰囲気が店のセッティングともマッチして良い。ピアノのブッゲ・ヴェッセルトフトが手馴れた感じのフレーズを奏でる。スタンダードなスケールなのだがディレイなどのエフェクターをうまく使ってクラブビートに溶け込ませている。ドラムスのエリック・ホルムはスティックを置いて手でたたいている。これもラテンな感じを出すのに一役買っているようだ。ベアテのスキャット・ヴォーカルが心地よい。ドラムスはスティックを取ってスタンダードなジャズ・ドラミングを聴かせるが、ツボを心得た盛り上げ方をしてくるのはなかなかの手腕である。


 
Beate S. Lech(Vocal, Program)  Marius Reksjo(Bass)
 
Jorn Oien(keyboards)  Erik Holm(Drums)

3曲目"Big Balloon" :
静かなピアノのイントロに電子音をかぶせて始まるスローナンバー。ベースはエレクトリックでダブ・ラインをたどっている。ストリングス、コーラスを絡め、徐々にヒートしてくる感じの展開が心憎い。思わず乗せられてしまった、という感じ。シンセサイザー・ソロもなかなかブルース・フィーリングの感じられるもので、クールなだけではなく熱のあるところを見せてくれた。

4曲目"On the Ground":
ライトタッチなクラブ・ビートで、切れの良いリズムが小気味良い。ベアテのヴォーカルの安定感が曲を単なるグルーヴィー・ビートで終わらせていないのはさすが。シークエンサーのリズム・トラックに乗せて叩くブラッシュ・ストロークのドラムソロが秀逸である。やはりこのドラマーはただ者ではないようだ。

5曲目"Bella" :
再びベースをアップライトに持ち替える。映画のワン・シーンからとってきたようなサンプリング・モノローグで始まる曲。ベースのリズム感がなんとも独特な切れのあるもので、ついつい惹きこまれてしまう。ベアテはなにか考え事をしているかのように俯きがちに歌っている。エレクトリック・ピアノのソロはイギリスのジャズロックのベテランプレイヤー、デイヴ・マクレイを思わせる、ユーモアを感じるフレージングである。スキャット・パートで聴かせるベアテのボーカルはソウルフルに伸びやかで気持ち良い。

6曲目"When My Anger Starts to Cry" :
ベアテ自らが「一番パーソナルな曲」という、精神科医に悩みを打ち明ける内容のスロー・バラード。抑制の効いた歌い方で、歌い上げるところは力強く歌うが決してシャウトにはならず、あくまでも曲の抑揚を表現するダイナミクスになっている。彼女のヴォーカリストとしての力量を感じさせる曲である。

7曲目"April Fool":
リズムボックスのプラスティックな響きのビートにシンセサイザーのアンビエントなSEがかぶさる。ベースはダブ・ラインをとっており、ドラムスはむしろパーカッションとして位置付けているようだ。ミステリアスな雰囲気漂う曲で、ベアテのフリーキーなヴォイス・パフォーマンスを交え、ダークな感じで聴き応えのある曲。

8曲目"Moderation":
 ファーストアルバムの"Home"より。ジャジーなベースラインにブラッシュ・ストロークのドラムス。この曲もバーシアに似た印象だがもう少しハードコアな感じになっている。この曲でのエレクトリック・ピアノのソロの疾走感が良い。サンプリング・ヴォイスとベアテの掛け合いが入り、ベースソロに続いて短いながらベースとドラムスのインタープレイも聴ける。ベースが取るストレートなリズムにドラムスがさまざまにシンコペイトしてゆき、それに絡むシークエンサーやキーボードがさらにポリリズミックな感じを高めて実に良い味を出している。

ラストナンバーが終わっても会場の拍手は鳴り止まず、もしバンドが戻ってきたらオールナイト・イベントに発展しかねない熱気を残して今夜のショーは幕を閉じた。もしまた見る機会があれば何をおいても見に行かねば、と誓わせるパフォーマンスであった。


Members:
Beate S. Lech(Vocal, Program)
Marius Reksjo(Bass)
Jorn Oien(keyboards)
Erik Holm(Drums)


<Set List>
1. Hind Sight
2. One and Only
3. Big Balloon
4. On the Ground
5. Bella
6. When My Anger Starts to Cry
7. April Fool

8. Moderation




ベアテ・レック インタビュー



Q: 日本はどうですか?

BL : 日本に来るのは3回目です。来るたびにいつも新鮮な驚きを感じます。本当に人がたくさんいて混雑していて、ノルウェーにはあまりない感じですね。そして大きくて、食べ物がとても美味しくて、それから日本の人はみんなとても親切です。

Q: 今日のライブでは音楽に加えてノルウェーサーモンがふるまわれると聞いているので楽しみです。

BL : それはいいですね!

Q: 日本のオーディエンスについての印象を教えていただけますか?

BL : まだ一ヶ所だけ、ブルーノートでしか演奏したことがないんですが、そのコンサートはとても素晴らしかったです。その時は、ジャズランドレーベルの音楽監督、Bugge Wesseltoftというキーボードプレイヤーと一緒に演奏しました。そんなに多くの人に来ていただけるとは思ってもみなかったんですが、チケットが売り切れになって、本当にすべてがパーフェクトでした。

Q: それは素晴らしかったですね。それでは、ニューアルバムについて教えていただけますか?

BL :そうですね、どこから始めたら…まず最初にこの風変わりなタイトルについて説明しましょう。"CEWBEAGAPPIC"というのは私の造語なんです。私は自分の音楽についてうまく説明したいと思っていて、ファーストアルバム"Home"をリリースした時に、ジャーナリストをはじめ、多くの人から「どんな音楽ですか?」と聞かれたときにも、自分の音楽的背景や歴史について、どうしても細かく説明しがちだったんです。答えるのに時間もかかってしまっていたので、一言で自分の音楽を説明できるようなタイトルをつけたかったんです。辞書も調べたんですが、よい言葉がみつからなかったので、自分で言葉を造ることにしました。

それぞれの単語には対になっている単語があって、対照的な意味になっています。"C"と "E" は、"Complex" と "Easy"。 "W" と "B" は、"White" と"Black"。"E" と"A"は、"Electronic" と "Acoustic"。"G"と "A" は、"Groovy" と"Ambient"。"P" と"P"は、 "Programed" と "Played"
。そして "I" と"C" は、 "Improvised" と"Composed" です。


Q:このアルバムには全てがつまっているわけですね?

BL : そうです。この言葉には、音楽について私が好きなことが込められていて、私の音楽をとてもうまく説明していると思います。

Q: 共演しているミュージシャンについて教えてください。

BL : 彼らはとても素晴らしいミュージシャンで、私は彼らが大好きです。彼らと共演できることを感謝しています。。CDでは、もっと多くのミュージシャンが参加していますが、ステージでは4人で演奏しています。その中心になっているのは(ステージで演奏しているのと)同じグループです。CDでは、ストリングスやホーンセクションなど、多くのミュージシャンに参加してもらいました。今回、東京のライブでは、キーボードプレイヤーのヨルン・オイエン。今日は残念なことにグランドピアノが無いので彼はデジタルピアノを演奏しますが、彼は本当に素晴らしいピアニストです。彼は自分のバンドでもよく演奏しているのですが、彼と一緒に演奏できてとても幸せです。そしてベースプレイヤーはBeady Belleのもう半分として、Beady Belleの音楽を作っている、マリウス・レクショー。そしてドラマーのエリック・ホルム。そして私です。

Q: あなたも楽器を演奏されるのですか?

BL : もちろん。ステージでは、DJのようなことをします。LPレコードは使いませんけど。私はサンプラーやエフェクター、コンピューターを使います。私はリードシンガーですが、歌っていないときにはバンドの一員として演奏するわけです。フルートのようなアコースティック楽器ではありませんが、デジタル楽器を演奏することによって、バンドの一部となります。

Q: 今日のステージが楽しみです。

BL: ありがとう。

今日はどのようなライブになると思いますか?

BL : 今日は、セカンドアルバム"CEWBEAGAPPIC"からほとんどのナンバーを演奏するつもりです。そしてファーストアルバム"Home"からも数曲演奏するかもしれません。コンサートはいつもオーディエンスとの対話なので、実際にコンサートがどのように進行するかは、わかりません。モノローグではないので、エキサイティングになるか静かになるか、オーディエンスによりますね。あるコンサートでは3分で終わる曲が別のコンサートでは15分になることもあります。だから、わからないんです!でも、事前に準備するのではなくて、ステージ上で自由に決めていける・・・こういうシチュエーションは大好きです。

Q: 本当に今日のステージを楽しみにしています。今日はどうもありがとうございました。

BL : Thank you.



Report by Tatsuro Ueda
Interview by Asako Matsuzaka

Transation by Tatsuro Ueda
Photography by Yoko Ueda, Asako Matsuzaka
Edited by Asako Matsuzaka
Many thanks to Royal Norwegian Embassy, Cosmo Public Relations, Jazzland record, Universal Music,
La Fabrique


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